Research Abstract |
本年度は、最も一般的な構成陰イオンであるBis-(trifluoromethanesulfonyl) amide, TFSA-と Imidazoliumタイプの陽イオンからなるイオン液体(IL)中における金属イオン溶媒和に関して構造化学的な観点から研究を進めた。さらに、イオンの溶媒和や反応性と密接に関係するILのバルク液体構造についても調べた。1-ethyl-3-methylimidazorium (EMI+)TFSA-および1-butyl-3-methylimidazolium (BMI+) TFSA-中に、アルカリ金属および二価遷移金属TFSA塩(Li+, Na+, K+, Cs+, Co2+, Ni2+, Mn2+, Zn2+)を溶解した溶液に対してRaman・IR測定を行い、金属イオン周りのTFSA平均配位数を見積もった。アルカリ金属イオン系では、Li=1.9, Na=2.8, K=3.0, Cs=4.0と決定できた。TFSA-は金属イオンに対して2つの酸素原子を使って二座配位することが知られており、Li+, Na+, K+, Cs+の配位座数はそれぞれ4,6,6,8であると考えられる。遷移金属イオン(M^<2+>)に対しても同様の実験を行ったところ、全てのM^<2+>で平均配位数はおよそ3であった。UV測定の結果と総合すると、IL中のM^<2+>は六配位八面体構造を形成すること、溶媒和したTFSA-はアルカリ金属イオン系と同様に酸素原子で二座配位をとることが分かった。EMI+TFSA-の液体構造について、X線散乱実験、NMRおよびMD法を用いて調べた。EMI+周りには4つのTFSI-が集合しクラスターを形成すること、Imidazolium環の+電荷の高いHにはTFSAのO原子で、アルキル基のHにはTFSA-のF原子で相互作用することが明らかとなった。
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