2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J03966
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
舟見 一哉 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 古筆切 / 勘物 / 古今和歌集 / 新古今和歌集 / 藤原清輔 / 藤原定家 / 書誌学 / 冷泉家 |
Research Abstract |
本年度は、勅撰集の古筆切二種と、清輔本古今集と定家本古今集の勘物について研究を進めた。まず「棄てられた本文 -伝二条為氏筆新古今和歌集切を端緒として-」、「伝二条為氏筆新古今和歌集切 補遺」では、鎌倉期に書写された『新古今和歌集』の古筆切を取りあげ、特異な本文や作者名表記の揺れがあることに着目した。そして、他の古筆切や古写本にある特異な本文も考慮し、これらは本文改訂や作者名表記の統一といった、編者らによる編纂作業が行われる以前の古い本文であると考えた。また、編纂作業の痕跡が具体的にみつかったことから、本文に即した新たな伝本分類が必要であることを述べた。本論文は今後の指針を示した基礎的研究にあたる。次に「勘物の位置 -清輔本『古今和歌集』の享受をめぐって-」では、清輔本古今集の古筆切を取りあげた。清輔本には清輔による勘物が大量に書き込まれているが、当該断簡は清輔本ながら勘物が全くない。勘物が省略される理由については特に問題視されてこなかったが、清輔による勘物が省略されていることは、清輔本を清輔の校訂本としてではなく、親本である伝貫之自筆本として享受した人々がいたことを示しており、清輔本の受容を考える上で看過しがたい。学会発表「陽明文庫蔵冷泉為相筆古今和歌集について」では、冷泉家において定家自筆本(嘉禄本)が証本であったゆえに、与える相手や目的によって、勘物や本文が忠実に転記されない場合があることを陽明文庫本から示した。また、この変改された嘉禄本が後世には嘉禄本と誤認されて転写されており、嘉禄本の変容に冷泉家が関与していたことを述べた。以上のほか、神奈川県立金沢文庫や陽明文庫などに所蔵されている、清輔本・定家本古今集および古筆切の実地調査を行った。あわせて、京都大学附属図書館、同文学部図書館の所蔵資料調査を行ってきた。それぞれの調査成果については次年度以降に報告したい。
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