2008 Fiscal Year Annual Research Report
TTFを用いる機能性超分子の構築とその物性に関する研究
Project/Area Number |
07J03992
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
江野澤 英穂 Tokyo Metropolitan University, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | テトラチアフルバレン / 自己集積 / ナノファイバー / ジアミド / 水素結合 / 応力転移 / 導電性 / ナノコイル |
Research Abstract |
申請者はこれまでにTTF縮環デヒドロアヌレン類が条件に応じて様々な超分子集積体を形成することを見出しており、特異な集積現象に基づく種々の機能性分子デバイスを構築することに成功している。本年度は次なる展開として、より直接的な材料への応用を視野に入れたシンプルな両親媒性構造のTTF誘導体に基づく集積ナノファイバーの構築とその機能発現について調査を行なった。申請者のこれまでの研究から、極性ヘッド部分にひとつの水素結合部位を有する誘導体がカルボン酸の相補的水素結合に基づく2量体形成を経てファイバー化し、中間状態における溶媒効果によって生成したファイバーの色や形状が大きく変化することが明らかとなっている。そこで、このようなファイバー形成における水素結合の役割についてさらなる知見を得るために、ヘッド部分に2つの水素結合部位を有するジアミド誘導体について検討した。興味深いことに、テイル部分にドデシルチオ基を有する誘導体において、アミド部分に導入されたアルキル鎖の鎖長に依存した劇的なモルフォロジーの変化と、機械的な応力や熱による特異なファイバー転移現象が観測された。これは7員環型の分子内水素結合の形成・開裂に基づく分子間水素結合ネットワークの変化が原因であると推測され、力学的応答を示す新しい電子繊維材料への展開に興味が持たれる。そこで申請者は、新しい概念に基づく自己修復素材の可能性を追求するため、当該分野では世界の先駆けとなるアメリカ合衆国・イリノイ大学ベックマン研究所に客員研究員として在籍し、新しいメカノ応答ポリマーの設計と合成に関する研究を通していくつかの重要な知見を得た。一方、テイル部分にオクタデシルチオ基を有する誘導体の化学酸化種からは導電性を示すコイル状のナノ構造体が得られており、その電磁波吸収特性に基づいた有害電波の遮断機能などに興味が持たれる。以上の結果は、伝統的なTTF化学や超分子化学といった基礎研究の枠を大きく越えて、今後、我が国の産業の一翼を担うことが確実とされる次世代ナノ繊維素材開発への貢献が期待される。
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Research Products
(4 results)