2007 Fiscal Year Annual Research Report
カオス力学系の不安定周期軌道解析に関する大規模数値解析とその応用
Project/Area Number |
07J04048
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
斉木 吉隆 Kyoto University, 数理解析研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | カオスカ学系 / 不安定周期軌道 / 大規模数値解析 |
Research Abstract |
近年、流体力学分野をはじめとして高次元のカオス力学系の生み出すふるまいが、少数の短い不安定周期軌道で捉えられるという報告がなされている。カオス力学系には無限個の不安定周期軌道が埋め込まれており、短い少数の軌道で全体の特徴が捉えられることは、我々の直感に反している。私は、この事実の背景を探る目的で、引受教員である山田道夫京都大学数理解析研究所教授との共同研究を実施し、離散力学系(ロジスティック写像、エノン写像)と連続力学系(ローレンツ系、レスラー系、経済モデル)に関して、ある長さまでの不安定周期軌道を網羅的に検出し、変数の軌道上時間平均を計算し、同程度の長さのカオス軌道断片上の軌道上時間平均との比較をおこなった。ロジティック写像の場合には、両者は基本的に同じ様な統計性質をもち、一方、エノン写像の場合には両者の軌道上平均値すら異なることがわかった。これらの離散力学系の結果は、短い少数の不安定周期軌道を用いたところで、一般にはカオスの統計性質の良い近似を与えないことを意味している。一方、連続力学系の3つのモデルに関しては、不安定周期軌道とカオス軌道断片上の統計性質は大きく異なり、対応するポアンカレ写像周期で周期軌道を分類したときに、ポアンカレ写像周期によらず、軌道上時間平均のヒストグラムは非常に似通っていることを明らかにした。一方、カオス軌道断片の場合には、軌道長を長くすることによって、ヒストグラムは長時間統計量付近に高いピークを持つようになる。すなわち、連続力学系のこれらのモデルでは、同程度の長さの不安定周期軌道とカオス軌道断片は、かなり違う統計性質をもち、短い不安定周期軌道は長い不安定周期軌道と同程度にカオスの長時間統計量の近似を与えうるということがわかった。
|
Research Products
(16 results)