Research Abstract |
これまで行ってきた本震がMw6.6の3つの地震系列(2004年新潟県中越地震,2005年福岡県西方沖地震,2007年新潟県中越沖地震)のスペクトル比法による解析から得られた地震のスケーリング則と余震活動の研究ついての結果は,論文として2つの国際学術誌に投稿し,出版および印刷中である.この震源スペクトル比特性の結果を検証し発展させるために,震源断層が複雑な2004年新潟県中越地震の震源域の地下速度構造を調査する目的で,地震波形モデリングを以下の通り実施した. (1)周波数-波数(FK)法コード(Saikia,1994)および,本震震源から80km以内に分布した防災科学技術研究所の管理するK-NETおよびKiK-netの52観測点を用いて,震源域周辺の構造をサンプルした本震の地震波形のフォワードモデリングを行い,震源を囲む多方向での1次元速度構造を構築した. (2)新潟県中越地震の震源域については,トモグラフィー法を用いた余震域周辺の速度構造のイメージングの結果が報告されているため,Kato et al.(2006)により震源域で求められた走時トモグラフィーに基づく3次元構造を用い,有限差分(FD)法コード(E3D; Larsen and Schultz,1995)による波形計算を行い,観測波形の再現性の検証を行った. (3)(1),(2)での波形解析結果の特徴は,相補的な関係を持つことが分かったため,両者の解析の結果の長所を組み合わることでモデルを改良し,0.05-0.2Hzの周波数帯域での観測波形計の再現性は改善された.しかし,いくつかの観測点で記録されている特異な波形は現在のモデルでは再現出来ていない. (4)現在,本震以外に大きな断層破壊を起こした最大余震(Mw6.3)および10月27日の余震(Mw5.8)についても同様の解析を行っている. 以上の解析結果を踏まえ,来年度は,小規模な余震も用いて構造モデルを改善し,震源域における物理的特徴を捉え田島・田島(2006)およびTajima and Tajima(2007,2008)で指摘された新潟県中越地震系列の震源スペクトル特性の違いに関連する,震源域でのサイスモジェニックな条件について検討していく.
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