Research Abstract |
昨年度からの継続で,地震波形モデリングと走時トモグラフィーを組み合わせた解析により,2004年新潟県中越地震の複雑な震源域の地下速度構造を調査する研究を以下の通り実施し,震源域を取り囲む殆どの観測点のデータを再現可能な3次元モデルを構築することが出来た.解析では,震源付近(震央から約40km以内,深さ約3-25km)の不均質構造の特徴を調べることを目的とし,本震震央から80km以内に分布した52点の強震計で記録された本震・最大余震(M_W6.3)・10月27日の余震(M_W5.8)の地震波形を解析対象とした. [1]周浪数-浪数法コード[Saikia,1994]を用いて震源域周辺の構造をサンプルした地震波形のフォワードモデリングを行い,震源を含む多方向での1次元速度構造を構築し,震源域周辺の構造の基本的な多様性を捉えた. [2]既存のローカルなトモグラフィーモデルのみを用いて波形を計算したが,合成波形は観測波形を十分に説明することが出来ず,特に複合断層が分布する本震断層の下盤側に位置する観測点において,波形の再現性が低くなった. [3]新たに行った走時トモグラフィーで決められたイメージと,1次元解析で求めた複数のモデルから3次元速度構造の初期モデルを作り,有限差分法コード[Larsen and Schultz,1995]で計算した理論波形とデータの相関を比較することにより,速度構造を改良し,最終的に,下盤側の特に複合断層を含む領域に5-10%のP・S波の速度増加を与えたモデル3DM-28が得られた. [4][1]-[3]から得られた解析結果を国際学術誌に投稿し現在印刷中である[Tajima et al.,2009].震源域近傍のローカルな不均質構造を考慮して地震波形の再現を行うアプローチは,これまで殆ど行われていないことから,より詳細なサイスモジェニックな条件の検討,更には大きな地震を想定したシミュレーション研究のモデルの高度化等にも寄与する研究であると思われる.この構造解析の結果を踏まえて,最終年度となる来年度は更に,これまでの研究(田島・田島[2006],Tajima and Tajima[2007,2008])で報告している新潟県中越地震系列の震源スペクトル特性の違いに関連する震源域でのサイスモジェニックな条件について検討を進めたい.
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