2008 Fiscal Year Annual Research Report
表面科学的手法を用いた有機薄膜トランジスタの安定性の研究
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07J04083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
霍間 勇輝 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ペンクセン / 光電子顕微鏡 / 有機溥膜トランジスタ / 電極 / 表面形態 / 薄膜成長 |
Research Abstract |
研究実施計画では、19年度に解明したペンタセン(有機半導体として代表的な物質)の自発的な凝集過程のメカニズムに沿って、より実用化に即したテーマ(大気暴露実験、ペンクセン薄膜のバッファー層としての利用)を実施すると記述した。しかしながら、ペンタセンの形態不安定性が実デバイスに好影響を与えるのは難しいと判断したため、初期テーマである表題に原点回帰し、現在報告されている有機薄膜トランジスタに関する問題点に対して、表面科学的な手法でアプローチすることにより、その根源が何に起因しているのかを問うこととした。 具体的には、有機薄膜トランジスタのボトムコンタクト構造において、電極付近の絶縁膜基板上では薄膜形態が通常の絶縁基板上とは異なることが示されており、特性までもそれによって制限されている現状のため、この原因を探ることにした。このような異常薄膜成長は、電極付近では、有機分子が電極と絶縁膜の2種表面から影響を受けるために、通常の単一基板上における成長機構とは異なると予想される。しかしながら、これまでの研究では異種基板が接合する面内ヘテロ界面における、有機分子の成長過程は明らかにされてこなかった。そこで、リアルタイムにて薄膜形態を観察できる光電子顕微鏡を用い、ペンクセン分子の電極近傍における成長機構解明に着手した。 結果、電極付近での特異的な薄膜成長は、絶縁基板上と電極上では有機分子の配向か異なり、その表面エネルギー差によって生じる蒸着時の分子の濃度勾配に起因することを見出した。また、これが原因で、膜厚が薄い場合には電極と薄膜との接合が取れない由々しき問題点も明らかとなった。 この現象を解明したことによって、有機薄膜トランジスタのような面内ヘテロ界面を持つデバイス全般に共通する、電極と有機薄膜の良好な接合状態または連続膜を作製する指針が得られたといえる。
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