2007 Fiscal Year Annual Research Report
神経病原性を示すトリレトロウイルスの分子系統解析とこれを基礎とした制圧の試み
Project/Area Number |
07J04098
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
畑井 仁 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トリ / 神経膠腫 / レトロウイルス / トリ白血病ウイルス / 神経病原因子 / 分子系統解析 / RNAi |
Research Abstract |
「トリの神経膠腫fowl glioma」はトリ白血病ウイルス(ALV)A亜群に属する,トリの神経膠腫誘発ウイルス(FGV)により惹起される。本研究課題の目的はFGVの神経病原因子を明らかにし,RNA干渉(RNAi)により本疾患を制圧することである。まず,FGVの神経病原性規定因子を明らかにするため,国内3ヵ所の動物園の鶏計129羽をPCRで検索した。PCR陽性個体からALV14株を分離して塩基配列を解析したところ,3株でウイルスの組織向性を規定するenv遺伝子に変異が生じていた。しかし,env変異株に感染していた鶏の脳病変とFGV感染例の脳病変は同質であったことから,これらのゲノムの共通部分に神経病原性を規定する領域があると推察された。そこで,これら成績をもとにRNAiの標的となりうる遺伝子領域を検索し,候補を3ヵ所見出した。現在,候補領域に対するRNAi効果をin vitroで検討している。一方,国内の採卵鶏に皮下腫瘍と神経膠腫を併発する例が発見された。そこで,採卵鶏の神経膠腫の病理組織学的特徴と病原因子を明らかにするため,皮下腫瘍罹患鶏18羽と同居鶏222羽の脳を検索した。皮下腫瘍罹患鶏11羽と同居鶏3羽に神経膠腫が認められた。しかし,PCRによるFGV診断法では神経膠腫罹患脳は全て陰性であった。そこで,罹患脳からウイルス10株を分離し,その一つであるTymS_90のゲノム全長を解析した。その結果,トリ白血病・肉腫ウイルスに由来する遺伝子領域を4つ持っていたが,それ以外は内因性ALVにより構成されいた。すなわち,FGVの他にも神経膠腫を誘発するALVが存在することが示唆された。現在,TymS_90の神経病原性を明らかにするため,本株をSPF鶏胚の卵黄嚢内に接種し,孵化後50日齢と100日齢の脳を検索中である。
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Research Products
(6 results)