2007 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属をドープした透明酸化物薄膜の光キャリア注入によるスピン制御
Project/Area Number |
07J04111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江口 律子 The University of Tokyo, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 酸化物薄膜 / 光電子分光 / 光キャリア注入 |
Research Abstract |
透明導電性酸化物薄膜は液晶板や太陽電池の透明電極など多岐にわたり応用されている。本研究では導入試料として、電極としても応用が期待され、パルスレーザー堆積法により良質な単結晶薄膜ができるLaNiO3薄膜を作成した。LaNio3は金属-絶縁体転移を示さず最低温まで常磁性金属状態を保つ物質であり、ペロフスカイト型RNio3(R:希土類元素)群の中では最も基本的な物質と位置付けられている。しかし単結晶試料の作成は困難であり、光電子分光などによる電子状態の研究は進んでいなかった。そこで単結晶薄膜を作成し、抵抗、X線回折、AFM等で膜質を確認したのち、軟X線吸収及び角度分解光電子分光測定を行いその電子状態について調べた。その結果、これまでに報告されている多結晶試料の光電子分光では観測されていなかった大きな状態密度がフェルミ準位上で観測された。これはNi 34のe_g電子状態に由来しLaNiO_3の高い伝導性を反映している。また成膜時の酸素分圧を抑制した試料では、フェルミ準位上の状態密度が減少した。これは酸素欠陥を入れることにより抵抗率が上昇し絶縁体へ転移している電子状態をとらえており、成膜時の酸素分圧が薄膜の物性に大きく関わることを示している。また、LaNiO3のフェルミ面の形状を実験的に得ることに成功した。電子及びホール由来の2種類のフェルミ面を区別することができ、電子由来のフェルミ面を形成するエネルギーバンドでは、フェルミ準位近傍において有効質量の繰り込みを示唆するバンドの折れ曲がりが観測された。この結果は電子状態の観点からもこの系が強相関金属であることを示している。以上のような成膜条件、酸素分圧に対する物性への影響や測定手法を踏まえ、透明酸化物薄膜であるIn_2O_3を作成している。良質で光照射におけるキャリア注入がより効率良く行われるように成膜基板との相性や成膜条件を探索している。
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Research Products
(4 results)