2008 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属をドープした透明酸化物薄膜の光キャリア注入によるスピン制御
Project/Area Number |
07J04111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江口 律子 The University of Tokyo, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 酸化物薄膜 / 光電子分光 / 光キャリア注入 |
Research Abstract |
透明導電性酸化物薄膜は液晶板や太陽電池の透明電極など多岐にわたり応用されている。本研究では導入試料として、電極としても応用が期待されるLaNiO_3薄膜を作製した。LaNiO_3は金属-絶縁体転移を示さず最低温まで常磁性金属状態を保つ物質で、ペロフスカイト型RNiO_3(R:希土類元素)群の中では最も基本的な物質と位置付けられている。次に関連物質としてNdNiO_3薄膜を作製した。金属のLaNiO_3と比較するとNdNiO_3は結晶構造が歪みNi 3dのバンド幅が減少することから、約200Kで常磁性金属から反強磁性絶縁体転移を示すようになる。本研究では薄膜化することで基板応力の影響により結晶の歪みが変わり、バルクとは違った抵抗率の振る舞いが観測された。バルクでは約200Kである転移温度(T_t)が、本研究で作製した薄膜では約240Kと高い転移温度を示した。これは基板応力の影響でバルクよりも歪んだ結晶構造で安定化し、希土類Rを変える(Rのイオン半径を小さくする)ことに対応する効果(Nd→Sm:T_t=400K)と同様に転移温度が上昇したものと考えられる。最適条件の薄膜ではバルク同様に抵抗率の急激な飛びが再現されているが、成膜温度を上昇させるに従い抵抗率の飛びが小さくなり、最終的に転移がなくなり絶縁体的になることがわかった。これは酸素欠損によるものと考えられる。 以上のように基板や成膜温度は薄膜の物性に大きな影響を与えることがわかり、それらを踏まえて透明酸化物薄膜であるIn_2O_3や磁性元素をドープしたIn_2O_3ついても研究を進めている。良質で光照射におけるキャリア注入がより効率良く行われるように成膜基板との相性や成膜条件を探索している。またペロフスカイト型酸化物においても、磁性を持った絶縁体などと組み合わせた多層薄膜の作製やその界面の電子状態の研究及び光キャリア注入の可能性について検討中である。
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Research Products
(4 results)