2009 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属をドープした透明酸化物薄膜の光キャリア注入によるスピン制御
Project/Area Number |
07J04111
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀場 律子 (江口 律子) The University of Tokyo, 物性研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 酸化物薄膜 / 光電子分光 |
Research Abstract |
透明導電性酸化物薄膜は液晶板や太陽電池の透明電極など多岐にわたり応用されている。導入試料として、室温で高い導電性を示し電極としてペロブスカイト型の強誘電体薄膜と相性が良いことが知られているLaNiO_3薄膜を作製し、その詳細な電子状態について明らかにした。加えてRNiO_3(R:希土類元素)群のNdNiO_3の作製も行った。NdNiO_3はLaNiO_3と比べ結晶構造が歪みNi 3dのバンド幅が減少することから、約200Kで常磁性金属から反強磁性絶縁体転移を示すようになるが、本研究では薄膜化することで基板応力の影響により結晶の歪みが変わり、バルクとは違った抵抗率の振る舞いを観測した。また絶縁膜材料で知られるCeO_2薄膜の作製及び光電子分光による電子状態の観測などを行った。本来、絶縁体のエネルギーギャップ中には電子状態は観測されないが、軟X線光電子分光の結果ではギャップ内に状態があることが分かった。一方でバルク敏感な硬X線光電子分光の結果では全く状態のないきれいなエネルギーギャップが観測された。この結果から表面状態によっては酸素欠損などで伝導性を示す可能性があるなど、デバイス応用の際に問題となる点が明らかとなった。 以上のように、基板や成膜温度は薄膜の物性に大きな影響を与えることを踏まえて透明酸化物薄膜であるIn_2O_3や磁性元素をドープしたIn_2O_3についても研究を進めてきた。本研究の目標としてきた光キャリア注入効果による電子状態の変化をとらえるまでには至らなかったが、他の酸化物薄膜の作製や光電子分光測定を行い、磁性を持った絶縁体などと組み合わせた多層薄膜の作製やその界面の電子状態の研究の足がかりとなる結果が得られた。
|
Research Products
(2 results)