2009 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅危惧植物ハナノキの遺伝的多様性と集団の分化構造の解明
Project/Area Number |
07J04145
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
佐伯 いく代 Tokyo Metropolitan University, 理工学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 絶滅危惧植物 / ハナノキ / 系統地理 |
Research Abstract |
ハナノキ(Acer pycnanthum)は、日本固有のカエデ属の木本植物で、本州中部地方でのみ自生が確認されている絶滅危惧植物である。本研究は、ハナノキの遺伝的多様性と集団の分化構造を明らかにし、近縁種と比較することを目的とする。具体的には、(1)葉緑体DNAの塩基配列多型の変異を調べ、(2)それらの変異と生育地の地理的分布や集団サイズとの関係を分析し、さらに、(3)ハナノキの近縁種であるアメリカハナノキ(Acer rubrum)とギンヨウカエデ(A.saccharinum)についても同様の解析をして比較を行うことを目的とする。これまでの研究の結果、ハナノキの葉緑体DNAからは9種類のハプロタイプが検出され、それらには地理的な構造がみとめられた。具体的には、分布域の北側と南側に比較的頻度の高いハプロタイプが出現し、それに挟まれるようにして残りのハプロタイプが分布していた。次に、サンプルサイズの大きい19の集団を対象に遺伝子分化係数G_<ST>を求めたところ、0.83と高い値を示した。以上から、ハナノキはその分布域がせまいにもかかわらず明瞭な遺伝構造を有しており、今後それを考慮した保全方策を検討する必要があると結論づけた。次に、アメリカハナノキ258個体、ギンヨウカエデ83個体の葉のサンプルを用いて、葉緑体DNAの遺伝子間領域(約1600bp)をハナノキ同様に解析した。一塩基の繰り返し数の違いを除くと、ハナノキからは2種類のハプロタイプが認識され、北アメリカに分布する2種と遺伝的に大きく分化していることが明らかにされた。一方、アメリカハナノキからは19のハプロタイプが検出され、強い地理的構造が認められた。ギンヨウカエデは、アメリカハナノキと分布域が大きく重複するにもかかわらず、ハプロタイプ数が7と少なく、地理的構造も不明瞭であった。さらに、アメリカハナノキとギンヨウカエデはミシシッピー川流域の集団を中心として5種類のハプロタイプを共有しており、この地域が交雑帯となっている可能性が示唆された。
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Research Products
(8 results)