2008 Fiscal Year Annual Research Report
電子・陽子衝突実験による陽子の縦方向構造関数の測定
Project/Area Number |
07J04152
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 志真 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 陽子構造 / DIS / パートン分布 / 深非弾性散乱 |
Research Abstract |
陽子の縦方向構造関数F_Lは陽子内でのグルーオン放出に直接起因する値であり、その直接測定は現在の量子色力学および陽子構造の理解にとって重要である。特に電子・陽子衝突実験HERAでの測定は、グルーオン分布の豊富な運動領域における初めての測定となる。 縦方向構造関数は複数のビームエネルギーにおける深非弾性散乱断面積を測定し、その差から直接導出される。本年度は、深非弾性散乱断面積の測定において、散乱電子の検出位置について、カロリメータ、飛跡、電子識別用シリコンパッド検出器による位置再構成を比較し、見直した。その上で、前年度までに解析した陽子エネルギーが460GeVと920GeVのデータに加え、新たに575GeVのデータを解析した。三つの異なるエネルギーでの断面積を縦方向構造関数の導出に用いることで、より安定した導出が可能となった。特に、三つのデータサンプル間の相対的なルミノシティ測定誤差の影響を見積もることができ、測定の精度を改良することができた。測定した縦方向構造関数を摂動論的量子色力学に基づく予想値と比較したところ、矛盾せず、現在の陽子構造の理解で縦方向構造関数を記述できることが確認された。特に、これまで摂動論的量子色力学に大きく依存する形で決定されてきた陽子内グルーオン分布を用いて、グルーオン放出に直接起因する値である縦方向構造関数をグルーオンの豊富な領域で記述できたことは重要である。これから始まる陽子・陽子衝突型加速器LHCでの物理ではグルーオンが主要な役割を果たすが、今回の測定により、現在得られている陽子内グルーオン分布の有用性が支持されたことはLHCでの物理にとっても、意義がある。
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Research Products
(4 results)