2007 Fiscal Year Annual Research Report
電子・陽子衝突実験による陽子の縦方向構造関数の測定
Project/Area Number |
07J04152
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 志真 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 陽子構造 / 深非弾性散乱 / HERA |
Research Abstract |
電子、陽子衝突型加速器HERAでの陽子の縦方向構造関数(FL)測定は、クォーク・グルーオンの陽子に対する運動量比の小さな領域での初めての直接測定となり、現在の陽子構造・量子色力学の理解の検証に不可欠である。 FLは異なる重心系エネルギーで測定した深非弾性散乱(DIS)断面積を比較して測定する。平成19年夏までHERAにおいて通常(920GeV、 HER)より低い陽子エネルギーでのデータを取得した。データ取得は順調に進み、当初予定していた陽子エネルギーが460GeV(LER)のデータ14pb-1に加え、575 GeV(MER)のデータ7pb-1を取得できた。三点での断面積測定により、より精度のよいFL測定が期待できる。 FL測定では、できるだけ低エネルギーの散乱電子の識別が重要となる。4月に国際会議でHERデータを用いて発表した解析手法では、電子の誤認によってDIS事象に紛れ込む光子生成反応(PHP)事象の量の不定性が、断面積測定の大きな不定性の一つとなった。このため、新たな電子識別手法を開発した。PHPで電子と誤認されるのは荷電ハドロンまたは光子・中性ハドロンである。このうち中性粒子である後者は電子に飛跡を要求することで除かれる。新たな手法では、散乱電子候補のエネルギーと位置から、それが電子・陽子散乱点からどこを通ってきたかを求め、その通り道上で飛跡検出器内のヒットの有無を確認する。十分な数のヒットがあれば荷電粒子とみなすが、なければ中性粒子として散乱電子候補から除外する。この手法により、飛跡の再構成が難しい散乱角度の小さい領域でも、DISの検出効率は90%を保ちながら、 PHPを70-80%除去できるようになった。 この手法を用いて、HERデータ・LERデータのそれぞれでDIS断面積を測定し、さらにFLを求めた。これらはZEUS実験暫定結果として平成20年4月に国際会議で発表される。
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Research Products
(3 results)