2007 Fiscal Year Annual Research Report
浄瑠璃芸論研究 -古浄瑠璃太夫・宇治加賀掾による音曲論の解読を中心に
Project/Area Number |
07J04154
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
平林 みずき (田草川 みずき) Kobe Women's University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 演劇学 / 近世演劇 / 芸論研究 / 古浄瑠璃 / 近松門左衛門 / 宇治加賀掾 / 節付研究 / 義太夫節 |
Research Abstract |
本年度は、古浄瑠璃太夫・宇治加賀掾の芸論を付す浄瑠璃段物集の調査と写真収集、および分析に努めた。現在、加賀掾による最初の浄瑠璃芸論『竹子集』(延宝六年刊)序文は、近世期に広く流布した『八帖花伝書』を規範として成立したものと考えられている。しかし分析にあたっては、『八帖花伝書』以外の謡伝書の写真を収集・翻刻し、それらと『竹子集』序文とを照らし合せ、新たな関連性発見に留意した。 その結果、『竹子集』序文が通説とは異なり、『塵芥抄』系謡伝書、とりわけその解説書である、進藤流脇方・進藤以三著『筆の次』(寛永十九年成立・筆写本)と直接的な関係を有することが明らかになった。中でも、『筆の次』の進藤以三による補筆部分とは、高い確率で本文の一致が確認されている。従来その拠り所とされていた『八帖花伝書』以外の謡伝書が、『竹子集』に強い影響を与えていた事実は、浄瑠璃芸論研究に新たな知見を齎すものと期待できよう。これらの研究成果については、2008年6月の日本近世文学会で報告することが決定済である。 一方、加賀掾研究の一環として、近松門左衛門作「最明寺殿百人上〓」の、宇治加賀掾本と竹本義太夫本を比較検討した上で、これまで指摘されていなかった相違点を明らかにし、義太夫節が摂取した〈文弥節〉が、この作品ではじめて記譜されたこと等を、「近松作「最明寺殿百人上〓」をめぐって-加賀掾本・義太夫本の相違点を中心に-」および「義太夫節における〈文弥節〉の発生と展開-「最明寺殿百人上〓」から「北条時頼記」へ-」の二論文にまとめた。
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Research Products
(3 results)