Research Abstract |
固体内をイオンが高速かつ選択的に移動するイオン伝導体は,電池やガスセンサー等,様々な電気化学デバイスへの応用が期待されている.経験的なパラメータを使用しない第一原理計算は,イオン伝導体の材料設計指針を得ることのできる強力なツールであるが,これまでの報告の多くは,イオンの移動経路に沿ったエネルギープロファイルを評価するに留まっている.本年度は,リチウムハライド(LiX,X=F,I)中のリチウムイオン伝導をモデルケースに,イオンの移動経路およびそのエネルギープロファイルの評価に加え,イオンのジャンプ頻度,伝導度の算出を行った. 古典的な剛体球モデルによる解釈では,岩塩型構造をとるリチウムハライド中のリチウムイオン伝導,(空孔機構)は,アニオンに囲まれた2つのボトルネックを通り,エネルギープロファイルはその2箇所で極大となることが予想される.理論計算の結果,LiIの場合はこのモデルに従い,2つのボトルネック付近でエネルギーが極大となった,一方,LiFの場合,その予想に反し,イオン移動の中点でただひとつの極大をもつことが分かった.ポテンシャル障壁は,それぞれ0.35eV(LiI),0.77eV(LiF)となり,イオンのジャンプ頻度および伝導度は,室温で6桁程度LiIの方が大きくなることが分かった. 以上のように,第一原理から固体内拡散を評価する本手法では,実験や単純なモデルでは把握できないイオンのミクロな動きを直接評価することができる.また,イオン伝導度などのマクロな量と結びつけることで,実験結果と直接対応させることが可能となる.本手法は,リチウムイオン二次電池のみならず,様々な電気化学デバイスの材料設計の一助となるであろう.
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