Research Abstract |
物語を理解することは,時間,空間,因果関係,主人公の心的状態といった複数の次元を持った状況モデルを,たえず更新することであると考えられる.感情情報を含んだ物語を読むことで生成される状況モデルは,Mentalizingに関連した神経基盤によって表象されるという仮説を確かめるために,fMRIを用いて検討を行った.23人の健常被験者が,3種類の異なった感情価を持つ状況説明文章と,先行する文章と一貫した同一のターゲット文から構成される文章を読んだ.つまり,ターゲット文を読むことによって状况モデルの更新を促す課題を用いた.同一のターゲット文を用いることで,異なった感情価を持つ状況モデルが更新されることによって,それに応じた状況モデルの神経基盤を賦活させると予測した.結果は予測した通り,ターゲット文に関連した脳活動は,Mentalizingネットワークの一部である背内側前頭前野と側頭極に加え,感情の評価に関連する外側前頭眼窩皮質において,ネガティブな感情価を持った状況の文脈を与えた場合に相関した.したがって,状況モデルの感情の次元は,感情評価の神経基盤とMentalizingネットワークによって表象されていることが明らかになった.本研究の成果は,北米神経科学会で発表した(Komeda H., Saito, D.N., Kusumi, T., and Sadato, N.The detection of other's emotional shifts in narrative comprehension. 37th Annual Meeting of the Society for Neuroscience). さらに,主人公と読者との類似性が,文の読解時間と主人公の感情状態の推測にいかに影響するかを検討した論文(Komeda, H., Kawasaki, M., Tsunemi, K., & Kusumi, T., (in press). Differences between estimating protagonists' emotions and evaluating readers' emotions in narrative comprehension.)が,Cognition & Emotion誌に受理された.
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