2007 Fiscal Year Annual Research Report
魚類のダイオキシン動態及び毒性におけるチトクロームP450の新たな役割
Project/Area Number |
07J04313
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
久保田 彰 Rakuno Gakuen University, 獣医学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ゼブラフィッシュ / ダイオキシン / 発生毒性 / P450 / シクロオキシゲナーゼ |
Research Abstract |
本研究の目的は、ダイオキシン(TCDD)の汚染マーカーとしての重要性を広く認められながらその存在意義さえ不明であったチトクロームP450(CYP)分子種のダイオキシン毒性における新たな役割を明らかにすることである。当研究室はこれまで、TCDDによる循環障害にシクロオキシゲナーゼ2(COX2)が関与することを示唆している。一方、COX2の作用により生合成されるプロスタグランジンは、COX2下流のCYP分子種によって生理活性を示す物質へと変換され、循環器系の調節に重要な役割を果たすものと推測される。そこで、本年度はゼブラフィッシュ胚を用いてTCDD循環毒性におけるCOX2下流のCYP分子種およびその他のTCDD誘導性のCYP分子種を網羅的に検討した。IP受容体(PGI2)、EP1受容体(PGE2)、FP受容体(PGF2α)の各拮抗薬では影響は認められなかったが、TP受容体(TXA2)拮抗薬はTCDDによる中脳血流遅延を回復させた。モルフォリノアンチセンス法により、トロンボキサンA2(TXA2)合成に関わるトロンボキサン合成酵素の翻訳およびスプライス阻害の両ノックダウン処置ともTCDDによる中脳血流遅延を回復させた。さらに、TP受容体作動薬はそれ自体で中脳血流遅延を起こし、この作用はTP受容体拮抗薬で回復した。以上の成績は、TCDDによる循環障害にCOX2/CYP5A経路が関与することを強く示唆している。一方、TCDD処置により、血流阻害の起こる発生ステージまでにCYP1C1/1C2の両分子種が誘導され、このうちCYP1C2の翻訳阻害により中脳血流遅延は回復した。今後は、ゼブラフィッシュ胚へのCYP1C1/1C2ノックインによりTCDD毒性が改善されるか否か検討するとともに、これらCYP分子種のTCDDによる誘導メカニズムを明らかにする必要がある。
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