2007 Fiscal Year Annual Research Report
層状貫入分化岩体の研究に基づく、マグマ溜り境界層分化メカニズムの解明
Project/Area Number |
07J04363
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
星出 隆志 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 斜長岩 / クリスタルマッシュ / 組成累帯構造 / 境界層 / 液体不混和 / 層状貫入岩体 / マグマ分化 |
Research Abstract |
室戸岬斑れい岩体のかんらん石斑れい岩中に分布する斜長岩脈が、マグマ溜りの冷却過程で発達する境界層で生じた「斜長石結晶に富んだクリスタルマッシュ」(以下、斜長岩マッシュ)の固結物であり、この斜長岩マッシュが境界層からプリュームとして上昇して上のマグマと混合することによりマグマ分化が起きていた可能性が代表者の先行研究により指摘されていた。本年度は、本岩体の斜長石結晶の組織と化学組成の解析からこのプロセスの解明を試みた。 まず、本岩体に見られる層状構造(モード層状構造、斜長岩脈など)に含まれる斜長石結晶の組成累帯構造と溶融組織の成因を明らかにし、その形成順序を読み取った。その結果、冷却に伴い上方移動する底部境界層での結晶分化で生じた「水に富む分化メルト」の移動・集積によって境界層内に水の濃集部が生じ、そこではメ・ルトの粘性降下によってかんらん石-斜長石の分離が促進され層状構造が発達した可能性が示された。また、本岩体のかんらん石結晶から、主に角閃石結晶からなる多結晶包有物「角閃石クロット」を発見し、その組成と産状から、これが底部境界層で生じた「水に富む不混和メルト」であると推定した。深成岩からの液体不混和の証拠は最近スケアガード貫入岩体で初めて報告され(Jakobsen etal.,2005)、本研究成果は世界で2例目となる。この水に富む不混和メルトは、斜長岩マッシュの分離を促す水の輸送モードであった可能性があり、現在解析を進めている。 さらに、本岩体の斜長石結晶は、組成累帯構造や溶融組織に基づき4タイプに分類でき、各タイプとそれが分布する岩体内の位置関係との間に相関があることがわかった。そして、本岩体の中央部に、底部境界層で結晶成長したと考えられるタイプの斜長石結晶を見出した。このことは、底部境界層でできた斜長石結晶が上の未分化マグマへとプリュームで運ばれていた可能性を支持する。
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Research Products
(3 results)