2007 Fiscal Year Annual Research Report
角度分解光電子分光法を用いた層状遷移金属酸化物における酸素同位体効果の研究
Project/Area Number |
07J04451
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
岩澤 英明 Tokyo University of Science, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高温超伝導 / 角度分解光電子分光 / 酸素同位体効果 / キンク構造 / フォノン |
Research Abstract |
本年度は、銅系高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>(Bi2212)における酸素同位体置換効果(^<16>O→^<18>O)を角度分解光電子分光法(ARPES)によって明らかにすることを主目的とし研究を行った。またそのために、酸素同位体効果を精密に検証するための手法の整備を進めた。 (1)極角、仰角、偏角を自由に制御できる高精度6軸試料マニュピュレータを使用することにより、試料の面内回転角の調整を行い、試料の測定方位を精密に決定する手法を確立した。これにより、同一波数空間内における^<16>O試料と^<18>O試料のARPESスペクトルを効率的に得ることが可能となった。 (2)Bi2212は二重層間相互作用により、結合バンド及び反結合バンドが存在し、複雑な電子構造を示す。一方で、低エネルギー領域においては、ARPESスペクトルにおける二枚のバンドの強度は終状態効果により著しく変化する。そこで低エネルギー領域におけるバンドの励起光エネルギー依存性を詳細に研究し、バンドの選択的測定が可能であることを見出した。また、各バンドに適した励起光エネルギーを用いることで、二枚のフェルミ面の面積を精密に求め、ドープ量をARPESにより決定することが可能となった。 (3)エネルギー・運動量分解能に優れた低エネルギー励起光を用いたARPESにより、最適ドープBi2212試料における酸素同位体効果を精密に検証した。その結果、第一ブリユアン帯対角線方向(ノード方向)のキンク構造(バンドの屈曲)において、従来のARPESでは成し得なかった微小な酸素同位体効果の観測に成功した。今後、酸素同位体効果の波数依存性、温度依存性、ドープ量依存性を検証し、高温超伝導体における電子・格子相互作用の理解を図る。
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Research Products
(8 results)