2007 Fiscal Year Annual Research Report
メタ個体群内における生活史形質の分化:河川性サケ科魚類を用いた実証研究
Project/Area Number |
07J04509
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小泉 逸郎 Hokkaido University, 大学院・地球環境科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 進化生態学 / 局所適応 / 遺伝子流動 / 遺伝的浮動 / 自然選択 / 表現型可塑性 / メタ個体群 / サケ科魚類 |
Research Abstract |
平成19年度は、サケ科イワナ属魚類オショロコマの生活史形質が個体群(河川)ごとに異なるかどうかを大規模な野外調査により調べた。さらに、そういった変異が環境要因によるものか、遺伝要因によるものかを区別するため、複数の河川から集めた魚を同一環境下において飼育した(共通環境下飼育実験)。 6月に約50本の河川で稚魚の体サイズを調べたところ河川ごとに体サイズが大きく異なっでいた(平均体サイズで1.5倍程度の差が認められた)。この体サイズの変異は成長の密度効果では説明できなかったため、稚魚の浮上時期、ひいては前年の親の産卵期の違いに起因すると考えられた。また繁殖期である9-12月に約30本の河川を定期的に踏査し産卵時期の違いを調べた。産卵時期が1ヶ月ほど早い河川、遅い河川も幾つか見られたが、全体的に産卵時期はオーバーラップしており、非常に長い期間続いた。また、6本の支流でメスの卵サイズ、卵数を調べたところ、特に卵サイズで個体群間変異が大きかった。 共通環境下における飼育では、6河川から集めた稚魚の成長率に明瞭な差は認められなかった。その一方で、卵の発生時間には河川間で有意な差が認められた。したがって、野外で認められた稚魚の体サイズの個体群間変異は遺伝的な成長率の差ではなく、遺伝的な卵の発生時間が関係しているかもしれない。 今後はこういった個体群間変異が、自然選択、ジーンフロー、ドリフトによってどれだけ説明できるかを、19年度にとったデータを詳細に解析して検討する。生活史形質の個体群間変異を調べる研究は多く行われているが、これほど多くの個体群を調べているものは少ない。特に、繁殖隔離に直接的に関係する繁殖時期の個体群間変異は非常に貴重なデータとなる。自然選択、ジーンフロー、ドリフトの相対強度を調べるためには、十分に多くの個体群を調べる必要があるが、平成19年度は順調にデータを集めることができた。
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Research Products
(3 results)