2007 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー超高分解能光電子分光装置の建設と高温超伝導体の微細電子構造の研究
Project/Area Number |
07J04554
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中山 耕輔 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 角度分解光電子分光 / 銅酸化物高温超伝導体 / 超伝導 |
Research Abstract |
従来の20-50eV程度の励起光を用いた角度分解光電子分光測定では、電子の検出深さが表面第一層程度であり、試料表面のラフネスや吸着分子のポテンシャルの影響により、実験結果の再現性を得るのが難しいという問題点があった。この問題点を解決するため、新型の低エネルギー励起光源であるキセノンプラズマ放電管を備えた超高分解能光電子分光装置を新たに建設・改良した。特に、水冷と空冷を用いた強力な冷却機構を構築し、キセノンプラズマ放電管を連続して300時間以上安定して発光させることに成功した。これにより、従来のヘリウム放電管を用いた場合に比べてバルク敏感かつ高エネルギー・運動量分解能での測定を可能にした。現時点での装置性能として、エネルギー分解能0.9meV、到達温度3.5Kを達成した。装置の改良と並行して、高温超伝導体Bi_2Sr_2CuO_6の超伝導状態における電子状態の研究を行い、単層系高温超伝導体のアンチノードにおいて世界で初めて超伝導コヒーレンスピークを観測することに成功した。また、詳細な温度変化測定を行い、単層系のBi_2Sr_2CuO_6では、これまで精力的な研究がなされてきた複層系のBi_2Sr_2CaCu_2O_8とは異なり、過剰ドープ領域でも高温まで擬ギャップ相が存在していることを明らかにした。さらに、La系高温超伝導体において、超伝導状態でのみ存在する多体相互作用によるエネルギー分散の変化を観測することに成功した。その結果、折れ曲がりを特徴付けるエネルギースケールが物質ごとの超伝導転移温度に対応して変化していることを見出した。また、この折れ曲がりが、磁気的な環境のみを強く乱す不純物の導入によって著しく抑制されることから、エネルギー分散の折れ曲がりの起源が電子と磁気励起との結合によって説明出来ることを明らかにした。
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