2008 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー超高分解能光電子分光装置の建設と高温超伝導体の微細電子構造の研究
Project/Area Number |
07J04554
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中山 耕輔 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 角度分解光電子分光 / 銅酸化物高温超伝導体 / 超伝導 |
Research Abstract |
従来の角度分解光電子分光測定で問題となっていた表面敏感性を解決するため、前年度に引き続き、新型の低エネルギー励起光源であるキセノンプラズマ放電管を備えたバルク敏感超高分解能光電子分光装置の改良を行った。装置の改良と並行して銅酸化物高温超伝導体Bi_2Sr_2CuO_6の電子状態の研究を行い、超伝導ギャップとは異なる起源をもつエネルギーギャップが存在することを見出した。この結果は、銅酸化物高温超伝導体における長年の未解決問題である擬ギャップの起源を解明する鍵となると考えられる。また、不純物置換Bi_2Sr_2CaCu_2O_8の超高分解能測定を行い、不純物による超伝導対破壊効果に起因した超伝導ギャップ形状の変化やギャップ内状態の形成を観測することに成功した。さらに、放射光を用いてバルクの電子状態を選択的に測定する手法を見出し、YBa_2Cu_3O_<7-δ>における超伝導ギャップ対称性のキャリア濃度依存性を決定することに初めて成功した。その結果、反強磁性的なスピン揺らぎが超伝導対形成と密接に関わっていること、及び超伝導ギャップ形状が物質よらず普遍的に振る舞うことを示唆した。銅酸化物高温超伝導体の研究と並行して、新たに発見された鉄系高温超伝導体の電子状態の研究にも取り組み、Ba_<1-x>K_xFe_2As_2におけるバンド構造および超伝導ギャップの波数依存性を直接観測することに世界で初めて成功した。超伝導ギャップサイズのフェルミ面依存性から、銅酸化物高温超伝導体と同様、反強磁性的なスピン揺らぎが電子対の形成に寄与している可能性を示した。
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