2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J04557
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山根 崇邦 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 知的財産権 / 正当化根拠 / 財産権主義 / 道具主議 |
Research Abstract |
平成19年度は,Peter Drahos教授(豪州)やMark A, Lemley教授(米国)の著作に示された問題意識にヒントを得て,知的財産権の正当化原理の研究を行った。その成果として,Drahos教授を招聘した北大COE国際シンポジウム(2008年1月12日 於:ホテルポールスター札幌)において,「財産権主義の台頭と知的財産権の正当化原理」と題する研究報告を行った。その概要は以下の通りである。 まず,近年の立法政策や裁判例において,知的財産権の保護対象の拡大や財産的利益の優越という形で財産権主義(proprietarianism, propertization)ともいうべき信念が浸透しつつある現状を分析した。次に,国際レベルや国内レベルにおいて財産権主義が台頭する要因を分析した。続いて,知的財産権の正当化原理の考察を踏まえながら,果たして財産権主義は正当化しうるものなのかという点について検討した。 検討の結果,現段階での結論として,知的財産権には人の行動の自由を制約する性質があるため,その積極的な正当化にあたっては,創作者個人の利益ではなく公共的な利益に着目する必要がある。それゆえ,知的財産権の正当化原理としては創作のインセンティヴ論が最も有力である。そして,創作のインセンティヴ論のもとでは財産権主義の信念は正当化しえないものである,と考えた。 もっとも,未解決の問題も数多く残った。例えば,創作のインセンティヴ論は,米国では従来から知的財産権の正当化原理として広く受容されてきたにもかかわらず,その米国においそ財産権主義の台頭が最も顕著であるという現実に目を向ける必要がある。財産権主義の台頭をコントロールするためには,インセンティヴ論外在的な抑止原理を内包した多元的な知的財産法理論の構築が必要であるように思われる。これは今後の課題としたい。 本シンポジウムには国内の知的財産法研究者が多数出席しており,本研究の意義・内容等について他の研究者に認識してもらう絶好の機会となったように思われる。
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Research Products
(2 results)