2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J04557
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山根 崇邦 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 知的財産権 / 正当化根拠 / 財産権主義 / 自然権論 / インセンティヴ論 |
Research Abstract |
平成20年度は,昨年度に引きつづき,英米の文献を渉猟しながら,哲学的アプローチと経済学的アプローチの双方から,知的財産権の正当化原理の研究を行った。当初の研究実施計画とは若干の相違があるが,来年度の博士論文の提出に向けて順調に研究を遂行している。 本年度の前半は,昨年度末に行った海外資料収集の成果をもとに,英国における正当化根拠論の研究に取り組んだ。後半は,2008年8月に北大で開催されたLee Nari客員准教授の集中講義に出席して得た知見をもとに,米国における正当化根拠論の研究に取り組んだ。そして,これらの成果をまとめたものを,博士論文の中間論文として,2009年3月に所属大学の法学研究科に提出した。 その概要は次の通りである。まず,哲学的アプローチに関しては,自然権理論をとりあげて,労働に基礎をおくモデルと人格に基礎をおくモデルに整理して検討した。前者はロックの労働所有理論に代表されるものであり,しばしば財産権主義の理論的基礎として援用されるものである。一方,後者はヘーゲルの人格的所有権論に代表されるものである。これは当初の構想から漏れていた。「正当化原理を多面的に考察する」というのが本研究の目的であるから,人格モデルを考察の対象に含めることができた点は本年度の研究成果の一つであるといえよう。 次に,経済学的アプローチに関しては,功利主義理論をとりあげて,事前のインセンティヴに基礎をおくモデルと事後のインセンティヴに基礎をおくモデルに整理して検討した。前者は創作のインセンティヴ論に代表されるものであり,伝統的な正当化理論である。一方,後者は管理・保守・改良のインセンティヴ論や「情報コモンズの悲劇」論に代表されるものであり,財産権主義の理論的基礎として援用されるものである。これも当初の構想からは漏れていたことから,事後のインセンティヴ論を考察の対象に含めることができた点は研究成果の一つであるといえる。
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Research Products
(1 results)