2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J04562
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石渡 弘治 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超対称模型 / 暗黒物質 / グラビティーノ / ビッグバン元素合成 / 宇宙構造形成 |
Research Abstract |
今年度私は、重力相互作用を念頭に置いた超対称模型(超重力模型)において、主に超対称粒子の存在がもたらす宇宙論への影響を共同研究者と共に研究した。超重力模型は、重力相互作用を媒介するグラビトンの超対称パートナー粒子であるグラビティーノを含み、このグラビティーノは宇宙暗黒物質の候補になりうるなど、現在素粒子標準模型が抱える様々な問題を解決することが期待されている。しかしグラビティーノが存在した場合、宇宙初期の歴史を大きく変える可能性があることが指摘されている。中でも、現在観測されている元素存在比率を非常によく説明することができるビッグバン元素合成シナリオに与える影響は大きいと考えられている。これまでの研究により、超重力模型におけるグラビティーノの存在は非常に強く制限されており、特にグラビティーノが宇宙暗黒物質を説明するようなシナリオを考えた場合、最も一般的な場合と考えられている超対称粒子質量スペクトラムシナリオにおいて、グラビティーノの質量の上限は約0.1GeVと結論付けられていた。しかし、近年我々が提唱した右巻きニュートリノを含む超対称模型の枠内においてこの結論を再検討し、詳しい解析を行ったところ、グラビティーノの質量の上限は最大で数百GeV程度まで上がることがわかった。さらに我々は宇宙構造形成から受ける制限についても詳しい解析を行った。我々は、右巻きスニュートリノを含む超対称模型の枠組みの中でグラビティーノが温かい暗黒物質となるシナリオを考え、解析の結果、広いパラメータ領域においてそのシナリオが実現可能であることを見つけた。これらの研究成果は、グラビティーノが暗黒物質となるシナリオに対して従来までに考えられていなかった新たな可能性を与え、標準模型を越えた素粒子模型における有力なシナリオの一つとして、今後の発展・検証が大いに期待されるものと考えている。
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Research Products
(3 results)