2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J04562
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石渡 弘治 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超対称模型 / 暗黒物質 / グラビティーノ / 高エネルギー宇宙線 |
Research Abstract |
今年度私は、宇宙暗黒物質起源と考えられている高エネルギー宇宙線の理論的研究を共同研究者とともに行った。これまでの高エネルギー宇宙線観測によれば、宇宙線陽電子やカンマ線の中に現在の宇宙物理学では説明のできない未知のシグナルが存在することが明らかになっている。我々はこの未知のシグナルが宇宙暗黒物質の崩壊、または対消滅によって発生したものであると考え、超対称素粒子模型の枠組みの中で宇宙暗黒物質の有力な候補とされているいくつかの超対称粒子について、期待される高エネルギー宇宙線の定量的な計算を行った。超対称粒子の対消滅によって宇宙線が発生するシナリオはこれまでに多くなされてきたが、超対称粒子の崩壊によって発生するシナリオはこれまでほとんど解析が行われていなかった。中でも長寿命不安定グラビティーノが暗黒物質となる場合について、今回我々が初めてその正確な計算を行った。さらに今年度、高エネルギー宇宙線の新しい観測データが公表され、この未知のシグナルの存在を確実なものと結論付けた。これを踏まえ我々は、高エネルギー宇宙線の数値シミュレーションにおける銀河模型パラメータの依存性の解析を行い、銀河模型の違いによる理論計算の不定性を定量的に評価した。こうした解析は観測データと理論計算の定量的な比較の際に不可欠なものである。さらに長寿命不安定グラビティーノが暗黒物質となるシナリオについて、銀河中心から発生が期待されるシンクロトロン放射の定量的な計算を行い、現在の観測と矛盾しないことを明らかにした。さらにこのシナリオでは、グラビティーノの次に軽い超対称粒子(NLSP)がLarge Hadron Collider(LHC)において非常に特徴的なシグナルとして観測される可能性があり、LHCにおけるNLSPの寿命の計測法やそれをもとにした長寿命不安定グラビティーノの性質の解明を研究した。
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Research Products
(8 results)