2009 Fiscal Year Annual Research Report
魚類ミオシン重鎖遺伝子群の発現変動と筋分化の制御機構に関する研究
Project/Area Number |
07J04576
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野 陽介 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 筋発生・筋分化 / ミオシン重鎖 / 遺伝子発現調節 / トランスジェニック / メダカ |
Research Abstract |
筋主要タンパク質ミオシンのサブユニットであるミオシン重鎖(MYH)はミオシンの生理機能に主体的な役割を果たすとともに、多くのアイソフォームが存在し、魚類の筋形成過程においても複数の遺伝子(MYH)が組織や発生段階によって異なる発現様式を示す。このことから、性質の異なる筋肉の形成にMYHの発現が密接に関与することが示唆される。本研究ではメダカの筋形成過程におけるMYHの転写調節機構の解析を通じて魚類筋肉の形成機構を明らかにすることを目的とした。 昨年度までに、メダカ胚体型ミオシン重鎖遺伝子(MYHemb1)および仔魚型ミオシン重鎖遺伝子(MYHL1)の遺伝子上流配列と蛍光タンパク質遺伝子を結合した外来遺伝子を導入したトランスジェニック魚を作出し、MYHの組織特異的な発現が上流配列による転写調節に由来することを示した。今年度はこれらのトランスジェニック魚を用いて各MYHの発現とメダカ胚における筋分化機構との関連を調べた。 MYHemb1の遺伝子上流1.9kbと緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を連結したコンストラクトは背側と腹側の筋肉を分割する水平筋隔部分で特異的に発現し、水平筋隔に局在する遅筋前駆細胞であるMuscle Pioneer細胞のマーカータンパク質engrailedと共局在を示した。さらにシクロパミン処理により遅筋分化の誘導因子であるヘッジホッグシグナルの阻害を行うとMYHemb1の発現が有意に減少することから、MYHemb1の発現が遅筋形成に関わることが示された。また、MYHemb1の発現低下と水平筋隔構造の消失が同時に観察されることから、MYHemb1が水平筋隔の形成に関与することが示唆された。 一方、MYHL1の遺伝子上流2.6kbと赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子を連結したコンストラクトは胚体の筋節全体で発現し、成魚では速筋に特異的に発現が観察された。また、ヘッジホッグシグナルを阻害してもMYHL1の発現は影響を受けないことから、MYHL1の発現はMYHemb1とは異なり速筋の形成に閧与することが示された。以上の研究成果は、魚類の筋形成における筋肉タンパク質の発現制御機構の解明に寄与するものである。
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Research Products
(4 results)