2007 Fiscal Year Annual Research Report
マイノリティ運動における「連帯」の可能性-日系リドレス運動後の展開を事例にして
Project/Area Number |
07J04639
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
土田 久美子 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会運動 / 運動フレーミング / エスニシティ / 日系アメリカ人 / 集合的記憶 / ライフストーリー |
Research Abstract |
日系アメリカ人リドレス運動と、その後の日系コミュニティと他のエスニック集団との相互作用を事例とし、異なるエスニック集団間の連帯構築の可能性とその成立条件を明らかにするために、本年度は以下の研究を行った。 (1)まず、社会運動に関する理論研究により、運動フレーム構築に焦点を当てた。それにより,この補償請求運動における「アメリカニズム」に基づいた支配的フレーミングが、同一の運動を構成した集団内に境界線を形成し、達成された目標の不均等な分配に帰結しただけでなく、その後の異議申し立ての戦術と手段に影響を及ぼしたことを明らかにした。この成果を、専門学会において報告した。(2)他方、この運動が、第二次世界大戦中の収容政策による損失への補償要求に基づいていることから、歴史的記憶の再構成とエスニック・アイデンティティの再構築プロセスについての分析も行った。その際に、運動において最大の転換点となった公聴会を取り上げ、各運動組織の証言をもとにして、収容政策と運動の意味づけを検証することによって、運動における公聴会の意義を分析した。その結果として、公聴会が、問題の開示と要求の正統化、「強制収容の記憶」の語りの共有とエスニック・アイデンティティの再構築の経路となったことを明らかにした。その成果を英語論文として公刊し、合衆国で行われた社会運動研究に関する学会で報告することによって、他の研究者からフィードバックを得た。 (3)(2)と関連して、日系人と他のエスニック集団との相互作用の調査を目的とし、ロサンゼルスでフィールドワークを行った。その際に、運動とエスニシティとの関連を検証するために、運動組織メンバーを対象とした聴き取り調査を行い、ライフストーリー法によるエスニック・アイデンティティ形成の提示として、その成果を学術論文として公刊した。
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