2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J04668
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 裕 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会学史 / 理論社会学 / 20世紀ドイツ / カール・シュミット / ユルゲン・ハーバーマース / 市民的公共性 / 西欧化 |
Research Abstract |
本研究は,第二次世界大戦後のドイツ社会学を事例に,機能分化という社会構造の把握と公共性の問題の連関について,理論的な観点から検討を加えるものである.本年度は,特にドイツにおける公共性(Offentlichkeit)という概念の分析のために,次の二つの主題について調査を行った.第一に,昨年度より引き続き,第二次世界大戦後のドイツ語圏を代表する思想家であるユルゲン・ハーバーマースの代表作である,『公共性の構造転換』成立の背景について,主に影響作用史の観点から分析を行った.この点につき,まず1980年代後半に繰り広げられたハーバーマースの初期の著作におけるカール・シュミットの影響に関する論争を整理した.この論争を通じて,ハーバーマースの議論を適切に理解するためには,シュミットだけでなく,同時代のシュミット学派,さらにはヘラーからアーベントロートへと受け継がれる社会的法治国論までも広く視野に入れる必要があることが認識されていった.しかし,『公共性の構造転換』と同じ主題を扱い,かつ,同書においてハーバーマースも積極的に引用しているリュディガー・アルトマンの博士論文の存在が,同論争において看過されていたため,その点を組み込んだハーバーマースの公共性概念に関する学説史研究を関東社会学会で報告し,後に論文にまとめた.第二に,1990年代中葉以降,アメリカやドイツで注目を浴びることになる市民社会(civil society,BurgergesellschaftないしZivilgesellschaft)という概念を中心に置く一連の研究について,主にドイツ語のものを中心に,調査を行った.この結果,ドイツ連邦共和国における規範的西欧化のイムパクトの大きさが改めて浮き彫りとなり,理論的なテクストを分析する際の知識社会学的観点の必要性がいっそう明確となった.
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Research Products
(2 results)