2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J04668
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 裕 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 公共性 / 機能分化社会 |
Research Abstract |
初期ドイツ連邦共和国の社会科学を素材に「公共性」という概念について理論的検討を行うことが本研究の課題である。初期ドイツ連邦共和国では同時代的現象として、従来の国家を公共性の独占体とする「国家と社会の二元主義」に基礎を置く概念体系に対する根底的な批判を通じた、新たな公共性の探求が多数行われた。本年度はこうしたさまざまな公共性の探求の試みにつき主にヴァイマル期ドイツの公法学の批判的継受という観点から、史料および二次文献の収集と整理を行い、主要な学説についての検討を行った。上半期には主にカール・シュミットとニクラス・ルーマンの学説につき検討を行い、両者の概念構成上の連関を特定した。さらにシュミットの脱政治化と全体国家という対概念とルーマンの脱分化と機能分化社会という対概念を対照させることにより、後者の社会理論が有する規範的含意を明らかにした。なおその結果は日本社会学会年次大会にて「ルーマンの社会概念とその背景」という題目のもと報告された。 下半期には主にリュディガー・アルトマンとユルゲン・ハーバーマースの公共性論を取り上げ、両者の比較検討を行った。その作業を通じて明らかとなったのは、初期ハーバーマースの公共性論が、シュミットの憲法理論に対する批判的検討を通じて再現的公共性と民主的公共性という二つの公共性類型を提起したアルトマンの公共性論を出発点としており、特にハーバーマースの著名な市民的公共性という概念が、アルトマンの民主的公共性という概念を、「公開と監査」という観点から、より実効的なものとして基礎づけ直すために導入されたものであったということである。この結果は現在、論文としてまとめられている。
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Research Products
(1 results)