2007 Fiscal Year Annual Research Report
抗シガトキシン抗体の特異性・高親和性創出機構の解明
Project/Area Number |
07J04697
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇井 美穂子 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 抗体 / シガトキシン / 環状ポリエーテル / 抗原抗体相互作用 / 抗原認識機構 / 海洋毒素 / X線結晶構造解析 / 熱力学 |
Research Abstract |
本研究では、抗シガトキシン抗体が有する基質特異性および高親和性の創出機構を原子レベルで明らかにし、シガテラ中毒治療薬あるいは診断薬、検出試薬等の開発に向けた有効な情報提供を行うことを目指してきた。X線結晶構造解析によって解明した抗シガトキシン抗体10C9の立体構造と、シガトキシンCTX3C断片を抗原とした場合の抗原抗体複合体の立体構造の比較から、抗原認識の際には、抗体可変領域に回転運動を伴った誘導適合と抗原結合ポケット入口の開閉が関与することを明らかにした。特に誘導適合では、その運動性の大きさが抗体定常領域の安定性に影響を及ぼし、抗原抗体複合体の立体構造安定化の差によって特異性が創出されていることを示した。さらに、抗原認識には水素結合、van der Waals相互作用が主に寄与しており、エンタルピー駆動型の結合を行うことで抗原抗体複合体の安定性を獲得していることが明らかとなった。抗体によるシガトキシンCTX3C認識機構の解明およびその詳細な立体構造情報は、抗体を基盤とした創薬を目指す観点から非常に意義深い。また、今回用いた抗シガトキシン抗体10C9はVH-VL界面に抗原結合ポケットとして機能する縦長の非常に大きな空孔を有しており、ポケット周辺の残基を改変することで新たな抗原に対する認識能を獲i得できる可能性がある。したがって、10C9はシガテラ中毒を対象とした抗体医薬に限らず、幅広い化合物を標的とした種々の検出試薬、合成触媒、医薬品へも応用できる可能性を秘めており、それらの開発を進める上でも本研究は非常に重要性が高いと考えられる
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Research Products
(8 results)