2008 Fiscal Year Annual Research Report
海洋の漂泳区生態系における小型カイアシ類(甲殻類)の機能的役割の解明
Project/Area Number |
07J04747
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西部 裕一郎 The University of Tokyo, 海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 海洋生態系 / 動物プランクトン生態学 / カイアシ類 |
Research Abstract |
本研究課題では、代表的な小型カイアシ類であるオイトナ科とオンケア科の摂餌および生産生態の解明を通じて、外洋生態系における両科カイアシ類の機能的役割を理解することを目的としている。この目的を達成するために、平成20年度は以下の項目について実施した。 親潮域におけるキクロプス目カイアシ類Oithona similisの鉛直分布、個体群構造および再生産 Oithona similisはキクロプス目に属する体長1mm以下の小型カイアシ類で、北太平洋亜寒帯域において最も優占する動物プランクトンの一種である。本研究では、親潮域におけるO.similisの個体群動態を明らかにすることを目的に、季節的・鉛直的に採集した野外試料を解析することで、本種の鉛直分布、個体群構造および再生産について調べた。 その結果、O.similisは周年を通して個体群の大部分が表層に分布しており、その個体密度は夏季に最大になることが明らかとなった。また、本種の個体密度は、生物量において優占する大型カパラヌス目カイアシ類数種のそれと比べて、10倍以上高かった。本種の再生産に関する幾つかのラメーター(卵の出現密度、クラッチサイズ、精包の付着頻度)の季節変化について調べたところ、本種の産卵は周年行われており、その最盛期は晩春から夏季であることが明らかとなった。昨年度の研究結果から、本種は繊毛虫などの微小動物プランクトンを主に摂餌することが分かっている。親潮域では、春季から夏季にかけて微小動物プランクトンの生物量が比較的高いことから、同時期における本種の高い再生産は微生物食物連鎖を経由した有機物に依存している可能性が示唆された。また、油球を持つ個体の割合を発育ステージ毎に調べたところ、本種は発育に伴って体内に脂質を蓄積することが明らかになり、成体雌ではこれを再生産に要するエネルギーとして利用していると推定された。
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Research Products
(2 results)