2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J04769
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松木 大造 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 視床下部 / GABA / レプチン / パッチクランプ / 覚醒・睡眠制御 / 摂食 / STAT3 |
Research Abstract |
近年同定された神経ペプチド・オレキシンは食欲や睡眠、報酬系の制御に重要であることがわかってきた。またその産生神経は視床下部・外側野に限られており、これらのオレキシン産生神経の活性制御機構はオレキシンによるさまざまな生理作用を知る上で重要であると考えられる。特にエネルギー状態に応じて変化するグルコースやレプチン、インスリンによるオレキシン神経の活性制御機構は、摂食と睡眠を結ぶ重要な機構であることが示唆される。そこで、レプチンのオレキシン神経への直接作用を見る目的でオレキシン神経の電気的活動記録を行った。オレキシン神経を同定するために、オレキシン遺伝子プロモーター下に緑色蛍光タンパク(eGFP)を発現するマウスの脳スライスを用い、スライスパッチクランプ法によりオレキシン神経活動を記録した。レプチン投与により、オレキシン神経は顕著な活動電位の消失、膜電位の低下(過分極)を示した。また、この反応は、IL-6やCNTFでも起こることから細胞内情報伝達を共有する反応であることが示唆された。そこで、推察される細胞内情報伝達因子の阻害剤を用いた反応を検討したところ、レプチンによるオレキシン神経活動め抑制は、JAK2-PI3K経路を活性化し、最終的にATP依存性Kチャネルを活性化することにより起こることがわかった。 また、主要な抑制性神経伝達物質の一つであるGABAによる抑制経路のうち、慢性的な作用に関与するGABAB受容体を介したオレキシン神経活動の抑制がin vivoでどのような影響が起こるのか検討した。GABAB受容体のうち、GABAB1受容体遺伝子のfloxマウスをオレキシン神経特異的Cre発現マウスと交配してオレキシン神経特異的にGABAB1受容体を欠損したマウスを作製した。電気生理学的解析により、オレキシン神経のみでGABABアゴニストに対する作用(過分極反応)が消失していることが確認された。また、これらのマウスの脳波筋電図を測定し、睡眠状態について解析した。その結果、オレキシン神経特異的にGABAB受容体を欠損したマウスでは、明期・暗期ともにコントロールと比べ顕著な睡眠ステージの分断化が確認され、オレキシン神経へのGABAB受容体を介した入力は、オレキシン神経の活動を制御することにより睡眠ステージの維持に重要であることが示された。 以上により、オレキシン神経の活動制御に関して、レプチンの作用機構を明らかにすることができた。今後はさらにその生理的な意味に関して解析を続ける。 また、GABAB受容体を介した入力機構に関しては、in vivoでの異常がどのようなオレキシン神経の異常に基づくのか、in vitroでの詳細な解析を行う予定である。
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Research Products
(5 results)