2007 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュ重複視物質遺伝子群の発現制御機構解明により迫る新しい色覚進化研究
Project/Area Number |
07J04820
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻村 太郎 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 色覚 / 進化 / 重複遺伝子 / 発現制御 / 視物質遺伝子 |
Research Abstract |
魚類の様々な種で、視物質遺伝子が重複し、それらの発現パターンが分化している。これは、魚類の生息する水中が多様な光環境を有するため、それに適応進化した結果だと考えられている。しかし、それらの発現パターン分化機構はほとんど解明されていない。私は、その解明は色覚進化研究において重要な意義を持つと考え、ゼブラフィッシュの緑型視物質RH2遺伝子をモデルとしてこの問題に取り組むことにした。ゼブラフィッシュのRH2には最大吸収波長の異なる4つの重複遺伝子があり、それらはすべて網膜中の複錐体副細胞で発現するが、網膜内の発現領域を異にする。これらの発現の制御機構についてはこれまでまったく知見がなかった。私は、遺伝子群の上流15kbに位置する制御領域RH2・LCRを同定し、それが全RH2遺伝子の複錐体副細胞特異的発現を誘導する制御領域であることを示した。さらに私は、RH2-LCRがメダカにも保存されており、遺伝子重複以前に起源が遡ることを示した。重複RH2遺伝子間で網膜内の発現領域が分化した機構についても、各重複遺伝子の直上プロモーター配列とそれぞれの間の位置関係が重要な役割を果たしていることを示唆した。これらにより、RH2遺伝子座のDNA制御領域の進化を以下のように記述することができる。まず、遺伝子重複によって、RH2-LCRがR且2遺伝子座の唯一の発現誘導領域となった。そして、RH2・LCRは、複錐体副細胞特異的な発現誘導という元々の役割に加えて、各RH2遺伝子の発現パターンを位置に応じて統括的に発現調節するという新たな役割も担うことになった。その過程で、各RH2遺伝子のプロモーター配列も変異を蓄積し、それぞれ発現パターン特異性を部分的に担うに至った。本研究のように重複視物質遺伝子の発現制御機構の進化について記述された例はほとんどなく、従って本研究は色覚進化研究において重要な意味を持つ。
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