2007 Fiscal Year Annual Research Report
司法環境が解雇規制に与える影響と日本の労働市場の構造変化に関する研究
Project/Area Number |
07J04835
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
奥平 寛子 Osaka University, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 計量経済学 / 法と経済学 / 労働経済学 / 解雇規制 / 労働市場 / 整理解雇 / 解雇権濫用法理 |
Research Abstract |
本研究の第一の目的は、日本の解雇規制の1つである整理解雇判例とその背後にある司法環境の関係を明らかにすることにあった。今年度の研究により、判事の裁量が整理解雇判決に与える影響が小さくない事実を示しただけでなく、その関係を上手く利用することで、整理解雇判決と都道府県雇用率等との間の統計的因果関係を明確に識別する分析を行った。 具体的には以下の手順により、分析を行った: 1.解雇判例に関する情報を「判例体系」(第一法規)より収集し、各判例を担当した裁判官および判決内容をデータとして整理した(約1600件)。 2.これらの判例データより、各判事が解雇事件においてどのような判決を下す傾向にあるのかを示す判事の個体効果を推定した。 3.日本の判事は3〜5年で定期的な転勤を繰り返している。判事の各都道府県に対する割り当てが景気と相関する要因とは別に外生的に決定されると考えるならば、その外生的な変動を推定の際に利用することで「整理解雇の判決傾向から労働市場パフォーマンスへの影響」という因果関係を識別することができる。具体的には判事の個体効果を操作変数とした分析を行った。 本研究により、以下の点が統計的に明らかにされた: 1.解雇無効判決数が解雇有効判決数を上回る傾向にある時には雇用率が有意に減少する。 2.東京都と大阪府の判事が整理解雇判例を形成させてきた。一方、その他の道府県で下された判決は景気状況や社会情勢を反映したものと考えられる。 本研究の最大の意義は、整理解雇判決が労働市場に与える影響について統計的因果関係の識別を日本で初めて行った点にある。整理解雇を行う際の手続きや基準の透明化・明文化が議論される中、本研究は日本の解雇規制の実証的効果に一定の結論を与えたという点で政策的重要性があると考えられる。
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Research Products
(5 results)