2007 Fiscal Year Annual Research Report
TLX転写共役因子複合体の同定と解析による、神経幹細胞未分化維持機構の解明
Project/Area Number |
07J04938
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 敦 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | オーファン核内受容体 / 転写共役因子 / 神経幹細胞 / TLX / LSD1 |
Research Abstract |
核内受容体は、リガンド依存的にその標的遺伝子群の発現調節を行うDNA結合性転写因子である。近年、このような転写制御には、ピストン修飾やクロマチン構造変換を司る複数の転写共役因子複合体群が関与していると考えられている。 TLX(NR2E1)は構成的転写抑制能を持つオーファン核内受容体である。TLXは、発生時の大脳および中脳の神経上皮、網膜、嗅球に限局した発現が見られ、さらにノックアウトマウスを用いた解析から、成体神経幹細胞の未分化維持に寄与するとの報告がなされている。しかし、TLXに関する生化学的解析や、転写共役因子の報告は少ない。そこで我々は、TLXの転写抑制機構を解明する目的で、ヒト網膜芽細胞腫由来細胞株Y79細胞の核抽出液を用いた生化学的精製により相互作用因子を探索した結果、TLXに結合する複合体の一つとしてLSD1複合体を見出した。 ピストン脱メチル化酵素LSD1はTLXに直接結合し、さらにLSD1はレポーターアッセイにおいて、そのヒストン脱メチル化活性を介してTLXの転写抑制能を促進した。また、クロマチン免疫沈降アッセイの結果、TLXとLSD1は、Y79細胞中でTLXの標的遺伝子の一つである癌抑制遺伝子PTENのプロモーター上に共に存在することが判明した。さらにTLx及びLsD1をRNAiにより発現抑制すると、PTENの転写抑制が解除され、細胞増殖能も抑制された。 これらの結果から、網膜芽腫においてLSD1はTLXの共役転写抑制因子として機能し、PTENの発現を抑制し癌細胞増殖を正に制御していることが示唆された。 今後は、さらなる新規転写共役因子を探索していく予定である。
|
Research Products
(2 results)