2008 Fiscal Year Annual Research Report
カイコ突然変異体コブ(K)の原因遺伝子と真皮細胞分裂機構の解明
Project/Area Number |
07J04941
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 淳一 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カイコ / 異常増殖 / 真皮細胞 / 突然変異体 / 原因遺伝子 / 腫瘍 |
Research Abstract |
本研究では、カイコ幼虫の突然変異体であるコブ(K)の解析から、真皮細胞で局所的に細胞の異常増殖が引き起こされるメカニズムの解明を試みた。コブ(K)の原因遺伝子については昨年度の報告の通り、連鎖解析を基本にしたポジショナルクローニングからゲノム上の440kbpの領域を特定し、原因遺伝子の候補を22個に絞り込むことに成功した。さらに本年度の解析から、K付近は組み換え頻度が著しく低いため、連鎖解析による詳細な絞り込みを続けることが困難な特別なゲノム領域であることが明らかになった。そこで、コブ(K)の表現型に影響を及ぼすカイコの突然変異体褐円(L)の解析からアプローチを試みた。褐円(L)は、一対の斑紋が複数の体節に出現する特徴があるが、コブ(K)との掛け合わせによって斑紋部がすべてコブ状に隆起する。そのため、コブ(K)において異常増殖が起きる領域を決める因子と考えられるが原因遺伝子は不明だった。Lの大規模なポジショナルクローニング及び発現解析を行った結果、広範な生物種で保存された遺伝子wnt1の異所的発現が、昆虫表皮では外皮の着色と真皮細胞の異常増殖の両方に深く関与していることが明らかになった。この発見は、カイコの幼虫皮膚で、Wntが細胞の異常増殖に関与するという保存的な機能をもつ一方で、幼虫紋様の多様化に寄与しているという新しい機能的側面を明らかにした点でも重要である。これらの結果から、昆虫の真皮細胞には本来、Wntシグナルの異所的な活性化に対して細胞の異常増殖を抑制する仕組みが存在し、コブ(K)の原因遺伝子はその仕組みの中で重要な働きをしている遺伝子である可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)