2007 Fiscal Year Annual Research Report
連結納税制度の研究-ドイツ法人税法の機関関係制度を素材として
Project/Area Number |
07J04960
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
安井 栄二 Ritsumeikan University, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 連結納税制度 / 機関関係制度 |
Research Abstract |
日本の連結納税制度において、子会社の保有資産は連結納税加入時に原則時価評価される。それは、親会社の税負担を軽減させる行為を防止するためであるとされるが、この時価評価は制度の複雑化の一つの要因となっている。これに対して、ドイツの機関関係制度においては、このような時価評価は行われていない。これはドイツでは子会社の損失が実際に親会社に移転するためである。他方、日本では実際に損失が移転するということはないので、ドイツとは前提が違うが、日本においても親子会社間で最終的な負担税額の精算は行われるので、当該損失は最終的に子会社が利用したことになる。つまり、連結後に子会社の含み損を実現させる行為は、親会社の税負担を軽減させる行為にはならないのである。それでもなお、当該時価評価について、日本とドイツでこのような差が生じる理由については、繰越欠損金の取扱いの相違からこのような差が生まれているのではないかと思われる。そのためこの問題については、繰越欠損金に関する研究が不可欠となるが、この問題は連結納税制度に限ったものではないため、さらなる詳細な検討が必要となり、現時点において結論を出すことはできないことから、今後の検討課題とする。 また、連結納税制度においては、企業グループを1つの課税単位とみることが正当化されなければならない。日本では、単一主体概念に基づき、親会社による子会社の100%支配によって企業グループが完全に一体となっていることがその根拠とされてきた。しかしながら、日本の制度の全体の構築にあたっては、個別主体概念に基づく修正が施されている。したがって、個別主体概念に基づいて当該根拠を修正することも可能であり、それにより連結納税制度の適用範囲を拡大することもできると思われる。
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