2007 Fiscal Year Annual Research Report
ONIOM法と超球面探索法を組み合わせた化学反応経路自動探索法の開発と応用
Project/Area Number |
07J04984
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
前田 理 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ポテンシャルエネルギー表面 / 超球面探索法 / ONIOM法 / 水素結合クラスター / 水和クラスター / 有機金属触媒 / BINAP |
Research Abstract |
分子やクラスターの安定構造(EQ)は、ポテンシャルエネルギー表面(PES)上のエネルギー極小点に相当する。また、化学反応の遷移状態(TS)はPES上の一次鞍点で近似することができ、EQ同士はTSを経由する反応経路で結ばれている。反応や構造といった化学の様々な問題は、PES上でEQやTSを系統的に求めることによって理論解析できる。これまで、反応経路をEQからTSに向かって上る方法が存在しなかったが、申請者らは超球面探索法を開発してこれを可能にし、PES上の反応経路ネットワークを直接辿って次々とEQとTSを明らかにすることのできる化学反応経路自動探索プログラムを開発した。本研究では、本手法をより複雑な巨大系に応用するために、以下の二つの追加プログラムを開発した。 (1)多くの理論解析では、低障壁の反応経路で結ばれた低エネルギー領域のPESが重要となる。そこで、探索範囲を障壁の高さとエネルギー値で限定する高速探索アルゴリズムを開発した。この高速探索法を、水素結合クラスターに応用し、これまでは簡便なモデルポテンシャルでしか議論できてこなかった有限温度でのクラスター構造に関して、信頼できる量子化学計算で解析できた。さらに、モデルポテンシャルでは記述が困難な、酸分子の水和クラスターについて、その構造を予測した。 (2)信頼できるエネルギー計算を高速に行えるONIOM法と(1)の低エネルギー領域の高速探索アルゴリズムとを組み合わせることで、巨大な有機金属触媒への有機分子の吸着構造の系統的な自動探索が可能となった。さらに、触媒反応のTSを系統的に得る問題にも応用し、不斉触媒として広く用いられているBINAPの選択性を、量子化学計算に基づいて自動的に再現することができた。つまり、本手法を、新しく設計された触媒の機能を検証するツールとして利用できることが分かった。
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Research Products
(10 results)