2008 Fiscal Year Annual Research Report
泥炭地湖沼の水文化学的環境の解明とその生態系保全・再生手法に関する基礎的研究
Project/Area Number |
07J04996
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木塚 俊和 Hokkaido University, 大学院・農学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 泥炭地湖沼 / 水文化学環境 / 水収支 / 物質収支 / 農地排水 / 水質保全 / 修復 / ミネラルイオン |
Research Abstract |
泥炭地湖沼は湿地を利用する様々な生物にとって重要な生息場であり,保全の必要性が社会的にも認識されている.しかし,泥炭地湖沼の保全に必要な,水文化学環境に関する研究は少ない,本研究では,以下の二課題を通して,とくに北海道の低平地湿原に典型的な泥炭地湖沼の水文化学環境の保全・修復手法を提言した. 課題1.泥炭地湖沼に固有の水文化学環境の把握 人為的攪乱の少ない釧路湿原赤沼を対象に,湖沼の水文化学環境を水・物質収支を用いて定量的に評価した.その結果,赤沼では余剰降水量が多いため,多量の地表流入水が生じ,これまで報告のあった泥炭地湖沼や泥炭地に比べて流入・流出水量が多かった.この地表流入・流出水は湖水のミネラルイオン蓄積を抑制する役割を果たしていた. 課題2.人為的攪乱による泥炭地湖沼の水文化学環境変化機構の解明 人為的攪乱を受けている泥炭地湖沼として,集水域の大部分が農地化された石狩泥炭地宮島沼を対象に,赤沼と同様の方法で湖沼の水・物質収支を調査した.その結果,宮島沼は農地排水の流入や樋門操作といった営農に伴う水管理によって,泥炭地湖沼本来の水文化学環境を失っていることがわかった.宮島沼の水文化学環境を修復するためには,農地排水の流入を阻止するだけでなく,降水のようなミネラルイオン濃度の低い地表水の流入が必要であると考えられた.以上の結果は,宮島沼を含む石狩泥炭地湖沼群の水文化学環境の保全を検討するうえで重要な知見となる.
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Research Products
(5 results)