Research Abstract |
理論面では,都市空間,文化産業を交差するマクロな動向を明らかにするために,情報化,流動化という社会構造的変化に着目し,二つの理論研究を行った。一つは,Manuel Castellsの1996年に出版された,情報社会三部作(The Rise of Network Society,Power of Identity, End of Millenium)を,Castellsの1960年代以降の学説史的な流れの中で位置づけつつ,テキストクリティーク的に読解する作業である。二つ目は,消費社会論関連文献のレヴューである。特に,Scott Lash & John UrryのEconomies of Signs and Spaceを読解するために,Jean Baudrillardをはじめとした関連文献をレヴューし,記号の消費というグローバル情報経済進展下の,文化産業の変化を分析するための理論的視角の検討を進めた。経験的研究面では,茨城県水戸市,宮城県仙台市,神奈川県横浜市のそれぞれフィールドワークを行った。【仙台市】地方自治体の現場レベルでの動向を調査するために,2008年10月から12月の間,せんだいメディアテークの高嶺格氏の展覧会の準備から完成まで参与観察を行った。二ヶ月間,週三日ほど高嶺氏の制作作業に携わるとともに,学芸員の事務作業を分析した。【水戸市】水戸市在住の文化産業関係者への聞き取り,資料の収集を行った。2008年10月31日,茨城水戸市で開催された,水戸芸術館,NPO「Me Too推進室」主宰のアートフェスティバル「カフェイン水戸2008」の視察を手始めに,11月1〜4日の間,「Me too推進室」メンバー,水戸芸術館学芸員,水戸市役所職員(水戸芸術館設立時の担当職員)への聞き取りを行った。資料に関しては,水戸芸術館設立の経緯を把握するため,1980〜90年までの水戸市議会特別委員会の議事録,及び90年前後数年間の茨城新聞の文化関係記事の収集を行った。【横浜市】本年度は,文化行政の新たな事例として横浜市も新たな対象地として,調査を行った。11月7〜9日,横浜市のアートNPO「BankART1929」,関係者からの聞き取り,横浜市初黄,黄金町での都市再開発事業の聞き取りを行った。
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