2007 Fiscal Year Annual Research Report
白血病細胞株の増殖・分化におけるマイクロRNAの構造と機能
Project/Area Number |
07J04998
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小坂 展慶 Waseda University, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マイクロRNA / 白血病細胞株 / 赤血球造血 |
Research Abstract |
近年の報告から小分子非翻訳RNAであるマイクロRNA(miRNA)が、細胞の分化や増殖、そして発がん機構に関係していることが知られるようになってきた。しかし生体内の恒常性を維持する蛋白質であるサイトカインにより制御されているmiRNAの報告例は少なく、個体の恒常性維持におけるmiRNAの役割は未だに不明である。そこで本研究では、ヒト白血病細胞株を用いて、赤血球産生に必須のサイトカインであるエリスロポエチン(EPO)により発現が誘導されるmiRNAの同定を行った。miRNAの網羅的な同定を行うためにmiRNAのマイクロアレイを用いた。マイクロアレイとmiRNAの高感度検出系であるリアルタイムRT-PCRを用いた結果、miR-210、miR-188、miR-362の3つのmiRNAが同定された。これらのmiRNAが白血病細胞株において、EPOにより発現を誘導されることがわかった。これらのmiRNAのうちmiR-210は、細胞株内での発現を抑制することによりアポトーシスが誘導される事から、生体内における機能解析を続けた。溶血剤を用いてマウス生体を貧血にすると、赤血球亢進状態における脾臓でのmiR-210の発現が上昇していることがわかった。さらに成熟段階にある赤血球の分化誘導実験や抗体を用いた成熟赤血球の単離により、赤血球の成熟段階においてmiR-210の発現が上昇することも確認した。最近複数の論文により、miR-210が癌細胞において発現していることがわかった。また乳癌の細胞株においては、低酸素状態でmiR-210の発現が上昇し、抗アポトーシス作用を示すことが知られている。本研究によりmiR-210は、癌細胞のみならず、赤血球において機能する事で、生体の酸素恒常性の維持に関わっていることが示唆された。本研究成果は、第49回米国血液学会にて成果を報告した。
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Research Products
(1 results)