2008 Fiscal Year Annual Research Report
Duration analysisの応用による価格硬直性のミクロ実証分析
Project/Area Number |
07J05021
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松岡 孝恭 Osaka University, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マクロ経済学 / 価格硬直性 / 適合度検定 / ミクロ計量経済学 / デュレーション分析 / ハザード関数 / 小売物価統計 / 物価変動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、物価の硬直性に関する理論的仮説を日本の「小売物価統計調査」の価格データを用いて検証することにある。その方法としてイベントが生じるまでに経過する期間数を扱う統計的手法、Duration analysisを応用する。名目価格の硬直性を記述するモデルでは企業が価格を変えられる機会がポアソン過程に従って生じると仮定されることが多い。この仮定を継続期間の観点から言い換えるならば、価格が一定のまま維持される継続期間の分布は指数分布であり、来期に価格改定が生じる条件付き確率(ハザード率)は前回の価格改定から経過した期間に依存せず一定ということである。今年度の研究では継続期間データの適合度検定を用い、当初の研究目的であった同仮説の検証を行った。検定統計量は経過時点ごとに帰無仮説で特定したハザード関数から導かれる価格変更回数の期待値をその実測値と比較するという原理に基づいており、両者の乖離が大きいとき仮説を棄却する。消費者物価指数(CPI)を構成する429銘柄の小売価格データ(2000年1月-2005年12月)を用いて銘柄ごとに検定した結果、(1)検定した銘柄のうちCPIウェイトにして8.6%の銘柄でハザード率一定の仮説を棄却できないこと、(2)価格改定頻度の高い伸縮的な銘柄で同仮説は一様に棄却されること、(3)ワイブル・モデルで高い適合度を示すハザード関数は期間の経過に対して減少ないしほぼ一定となること、(4)調査都市の異質性を考慮することが適合度の改善に結びつかないことを明らかにした。指数分布に関する適合度検定については、複数の検定方法を用いて結果の頑健性をチェックすると同時に、モンテカルロ・シミュレーションにより検出力を比較した。今年度の研究は、価格継続時間の観点から硬直価格モデルを客観的に評価するものとして大きな意義がある。
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Research Products
(5 results)