2009 Fiscal Year Annual Research Report
Duration analysisの応用による価格硬直性のミクロ実証分析
Project/Area Number |
07J05021
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松岡 孝恭 Osaka University, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 価格硬直性 / 物価変動 / 市場構造 / POSデータ / 小売物価統計 / マクロ経済学 / ミクロ計量経済学 / 生存時間分析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、財政・金融政策の有効性を示す根拠となる価格硬直性にまつわる様々な特性を実証的に明らかにすることである。分析手法としては状態変更までの期間数を確率的に扱うDuration analysisを応用し、消費者物価指数を構成する財とサービスの価格データを解析する。研究計画の3年目にあたる本年度は、価格硬直性の銘柄間でのばらつきを、競争度や製造元と小売店の垂直的関係といった市場構造の要因によってどの程度説明可能かという問題に取り組んだ。この目的のために、商品の購買時点における価格と販売数量を記録したPOSデータ(1988年-2008年、日次)を使用し、1,600以上に及ぶ商品グループごとに価格改定頻度と市場集中度を示すハーフィンダール指数、N社独占度を計測した。分析の結果、両者には統計的に有意な負の相関があり、寡占的市場で価格がより硬直的になることを示した。この関係は商品グループの固定効果とグループ内総売上高で測った市場規模でコントロールしても成り立ち、また年次のパネルデータで推計しても同様に成り立つ。分散分析の結果、価格改定頻度は製造元企業間と小売店舗間でともに有意差があり、価格硬直性が双方の価格設定行動に依存することを示した。価格硬直性と市場集中度を議論している先行研究では両者の相関を論じる際、品目分類法の異なるデータセット間で銘柄を対応付ける必要があった。それゆえ対応付けが不完全になったり、また対応の付いた銘柄数が限られたりしたことが原因となり、信頼性の高い統計的推論ができていない。POSデータを用いた本研究はこの問題を解決しており、価格硬直性の銘柄間での異質性を市場構造との関連で説明した研究として大きな意味がある。
|
Research Products
(5 results)