2007 Fiscal Year Annual Research Report
二次元三角格子系バナジウム硫化物におけるスピン・軌道・電荷複合物性と新奇基底状態
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07J05142
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片山 尚幸 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 金属-絶縁体転移 / スピン-重項 / 電子相制御 / 新奇基底状態 / 幾何学的フラストレーション / 格子異常 / 擬ギャップ / 軌道秩序 |
Research Abstract |
従来の反強磁性モット絶縁体の系では、局在極限から遍歴極限まで横断する過程で、常磁性絶縁体相、反強磁性絶縁体相、常磁性金属相の三相で特徴付けられる電子相図が現れる。反強磁性絶縁体相近傍の常磁性金属相で現れる非フェルミ液体的振る舞いや超伝導は今目の物性物理の主要なトピックスである。本研究では、このような系に幾何学的フラストレーションの影響が加わったとき、反強磁性絶縁体相が不安定化し電子相図がどのように変化するのか、また、金属相でどのような特徴が現れるのか、明らかにすることを目的とした。 出発物質として二次元三角格子系LiVO_2を取り上げた。LiVO_2は全温度領域でモット絶縁体であり、幾何学的フラストレーションの影響で基底状態としてスピン一重項を形成する。OをSやSeに変え、キャリア数を変えずにバンド幅を広げることでスピン-重項相の抑制に取り組んだ。OをSに変えたLiVS_2はLiVO_2と同じく三量体スピン-重項転移を示す。ただし遍歴性が高まっており高温相はLiVO_2とは異なり金属となる。SをSeで置換していくとスピン-重項絶縁体相は完全に抑制され、LiVSe2は全温度領域で金属となる。以上からLiVO_2-LiVS_2-LiVSe_2系ではバンド幅制御の過程で、常磁性絶縁体相、三量体スピン一重項絶縁体相、常磁性金属相の三相で特徴付けられる電子相図が現れることが明らかになった。スピン一重項絶縁体相近傍の金属相では、格子異常とそれに伴う擬ギャップの形成が起きていることが構造解析・磁化測定から見出された。スピン一重項の系における電子相制御は無機の系では初めての成功例であり、金属相での格子異常と擬ギャップの形成はスピン一重項の系において見出された新しい現象である。量子スピン系物理の発展に大きく貢献するものと期待される。
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Research Products
(3 results)