2008 Fiscal Year Annual Research Report
二次元三角格子系バナジウム硫化物におけるスピン・軌道・電荷複合物性と新奇基底状態
Project/Area Number |
07J05142
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片山 尚幸 The University of Tokyo, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 二次元三角格子 / スピン一重項 / 金属-絶縁体転移 / 幾何学的フラストレーション / 軌道自由度 / 擬ギャップ / バンド・ヤーンテラ転移 / バナジウム硫化物 |
Research Abstract |
本研究では、二次元三角格子LiVX_2系(X=O,S,Se)の物性探索を行ってきた。LiVO_2は全温度領域でモット絶縁体であり、約500Kで三量体スピン一重項という非自明な磁気的基底状態を形成する。カルコゲン元素をO-S-Seと変化させることによって遍歴性を高め、三量体スピン一重項相を抑制し、系を金属化することが可能である。本研究ではこれまでに、三量体スピン一重項絶縁体相近傍の金属相において、三量体化に向けたVの格子異常と、それに伴う擬ギャップの形成が生じることを電子線回折・磁化測定から明らかにしてきた。相境界近傍での擬ギャップはスピン一重項の系で見いだされた新しい現象であり、銅酸化物系高温超伝導体の擬ギャップ金属相との関係も興味深い。 昨年度の研究でLiVX_2系の基礎物性を明らかにすることに成功したため、本年度は(1)擬ギャップ金属相の詳細を明らかにする、(2)Li量制御によるスピン一重項の融解・金属化、という二つのテーマに取り組み、以下に示す結果を得た。 (1)擬ギャップ金属相の物理の解明 擬ギャップ金属相では、三量体化に向けたVの短距離秩序が発達する。短距離秩序発達にともなって、V-V間距離がどのように変化するか明らかにするため、SPring-8においてLiVO_2,LiVS_2高温相のEXAFS測定を行った。LiVO_2,LiVS_2ともに低温は三量体スピン一重項絶縁体相で共通しているが、高温相が異なり、LiVO_2は絶縁体、LiVS_2は金属(擬ギャップ金属)となる。EXAFS測定の結果、LiVO_2では短距離秩序の発達がなく、V-V間距離が一定であることを示す強度の強いピークを観測した。一方、LiVS_2ではV-V間距離を示すピークが何故か完全に消失した。これはVが固体中であたかも液体のように振舞っていることを示唆しており、擬ギャップ相に見出された新しい物理である。 (2)Li量制御によるスピン一重項絶縁体相の融解 スピン一重項を融解して金属化するための新たなアプローチとして、Li量の制御に取り組んだ。具体的にはLiVS_2からLiを取り除いたLi_<0.5>VS_2が全温度領域で金属となることを見出した。このLi_<0.5>VS_2は345Kで常磁性金属-キュリーワイス常磁性金属転移を示す。同時にhexagonalからmonoclinicへの対称性の低下が起きること、Vの形式価数が3.5+と半整数価数であること、などから、driving forceとしてband Jahn-Teller転移が期待された。また、本研究の成果によって、Li_xVS_2系(0≦x≦1)が多彩な新奇相転移
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Research Products
(3 results)