2007 Fiscal Year Annual Research Report
神経軸索ガイダンス因子、セマフォリンの新しい情報伝達機構の研究
Project/Area Number |
07J05201
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 由梨 Kyoto University, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | Sema4D / Plexin-B1 / R-Ras / PTEN / PI3-K / PIP3 |
Research Abstract |
Sema4Dは反発作用を示す神経軸索ガイダンス分子であり、その受容体Plexin-B1を介して伸展中の軸索の軌跡を厳密に制御している。本研究の目的は、Sema4Dの示す反発作用のシグナルの全体像を解明し、さらには、そのシグナル伝達の生理的意義を分子レベルから個体レベルにかけて明らかにすることである。現在までの研究で、Sema4Dの示す反発作用には、Plexin-B1による、R-Ras不活性化を介したPI3-Kシグナルの抑制が関与していることがわかっていた。今回、申請者は、Sema4Dのシグナル伝達に関与している新たな分子としてPTENを同定した。PTENはPIP3ホスファターゼであり、PIP3を産生するPI3-Kを負に制御する分子である。Sema4Dは、PTENを脱リン酸化し、細胞質画分から細胞骨格画分へと移行させ、そのホスファターゼ活性を活性化していることがわかった。また、Sema4DによるPTENの制御は、Plexin-B1による、R-Rasの不活性化が必要であった。さらにPTENのホスファターゼ活性は、Sema4Dの引き起こすPI3-Kシグナルの抑制に必要であり、また、反発作用に必要であることがわかった。このことから、Sema4Dが反発作用を示すシグナル伝達では、PI3-Kの不活性化とPTENの活性化が同時に引き起こされており、PIP3の量が精密に調節されていることが明らかとなった。Sema4Dは、複雑なシグナル伝達を用いて、PIP3の量を効率的、かつ厳密に調節し、反発作用の際に引き起こされるダイナミックな細胞骨格の再構築を可能にしている。
|
Research Products
(2 results)