Research Abstract |
本研究の目的は,供給・需要の変化を通じて再編されてきた子育て支援システムの実証的解明と妥当性を検証することにある.そのために,昨年度は,近年子育て支援の中でも重要性を増しつつある学童保育と家庭保育支援を扱った. まず,19年度以来継続してきた全国の学童保育の現状に関する知見を踏まえたうえで,大都市圏における学童保育の供給体製の変容について整理した.その結果,公的学童保育供給の開始が早かった大都市圏の中でも,特に多様な利用者層を抱える川崎市では,ローカルな歴史的背景が供給体制の再編に影響を及ぼしていることが明らかにされた.この成果は,雑誌『人文地理』に掲載された. また,子育て支援の現状は,従来の保育所拡充を中心とした対策のみならず,家庭保育世帯をも含めた包括的なシステムへと変容しつつある.この現状に鑑み,非共働き世帯のサービス利用の現状と課題について調査を開始した. まず,新しく登場してきたサービスである「子育て広場」に注目し,全国子育てひろば協議会の会合への出席や,香川県における子育て広場の供給と利用の現状についての調査を行った.そこでは,祖父母や親族などのサポート資源が得られにくい大都市圏や,転勤族の多い地方中核都市において,子育て広場が先進的に供給されている状況が示唆された. さらに,海外在住世帯の現地でのサービス利用やサポートの現状について,フランスでの調査を実施した.12月から1月にかけ,アンケート調査で現地でのサービス利用の状況を概観したうえで,2月には現地でのインタビュー調査を行った.その結果,手厚い家族政策で知られるフランスにおいて,そこに住む日本人母もまた,就労・非就労にかかわらず,現地の多様な保育サービスの恩恵を享受していること,その一方で,第二子の出産などの際には日本の祖母の呼び寄せを行うなど距離を超えた親族サポートが重要な意味をもっていることが示唆された.
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