2007 Fiscal Year Annual Research Report
ネットワーク産業の競争政策に関する理論的・実証的分析手法の開発
Project/Area Number |
07J05321
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒田 敏史 Kyoto University, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ネットワーク効果 / ネットワーク産業 / 情報通信産業 / 価格弾力性 / 競争政策 / 計量分析 / 費用関数 / 限界費用 |
Research Abstract |
情報通信産業に代表されるネットワーク産業の競争政策立案のためには規模の経済や範囲の経済などの費用関数の性質についての情報が必要である。しかし、今日の情報通信産業は個別企業の費用情報は企業秘密となっており、産業全体を分析するに足る費用データを入手することは困難である。そこで、本研究では競争の形態に一定の仮定をおいた上で、需要情報を用いて限界費用の推定を行うアプローチに改良を加え、需要情報を用いたデータからネットワーク産業の費用関数に関する情報を入手することができるかどうかについて検討を行った。文献のサーベイの結果、間接ネットワーク効果の存在する財の需要分析をするにあたって、間接ネットワーク効果を含めずに弾力性の推定を行うと推定値に上方バイアスが生じることを発見した。弾力性の上方バイアスは限界費用を過剰推定し、市場の範囲を過大推定し、合併の効果を過小推定し、暗黙の共謀が無い場合に存在を誤検出する等、需要情報を用いた政策分析にあたって大変深刻な過誤をもたらす畏れがある。こうした影響の実際の影響度を検証するために、総務省公表のブロードバンドサービスの契約者数のデータ、及び各種文献のデータ、分析に必要となるコンピュータ・及びソフトウェアを研究費を利用して入手し、ブロードバンドアクセスサービスの需要の価格弾力性の推定を行った。その結果、バイアスの大きさはきわめて大きいことを定量的に明らかにした。本研究はネットワーク産業の競争分析を行う際にネットワーク効果のもたらす影響を定量的に明らかにした希少な研究であり、今後の政策立案に大いに資することになるだろう。
|